抄録
われわれは先に (1) アイソタクチックポリスチレン (IPS) およびその誘導体の赤外スペクトルにおける1364, 1314, 1297および1185cm-1のバンド (A) がこれらの物質のアイソタクチックならせん構造に密接に関係のあると考えられること, および (2) IPSの983cm-1のバンド (B) は結晶化によって著しく強度を増大することを報告した。これまでの実験結果より判断して, Aの4個のバンドはらせん状分子鎖の分子鎖内相互作用に起因し, 8は結晶領城内における分子鎖間相互作用に基くものであることを推論した。本研究ではIPSとその主鎖重水棄化物の混合試料 (モル比2: 8) についてスペクトルを測定し, Aのバンドが周囲を重水素化分子鎖で取り囲まれても影響を受けないことを認め, またIPSとそp-重水素化物の混合試料 (モル比2: 8) について測定したスペクトルではBのバンドが周囲をか重水棄化分子鎖で取り囲まれることにより著しく弱くなることを認めた。これらの実験事実は上記の推論の正しいことを立証するものであろう。