2020 年 41 巻 p. 53-70
本稿は中国語コーパス、日本語コーパスを利用し、語共起の情報に基づき、共感覚的比喩における<強><重>の使いわけを分析し、その要因を考察した。その結果、日本語では、「強い」は五感、心的状態、抽象領域まで転用できるが、中国語の場合、「重」は五感と心的状態まで拡張し、「强」は抽象領域の転用が多いことがわかった。
さらに、中国語では、自分か第三者が観察できる外部からの刺激(身体動作)は有界と考えるパターンをとりやすく、物だけでなく、動作も個体(複数個体)として捉えられている傾向があることを明らかにした。
以上のことから、中国語は、<個体(複数個体)>のスキーマによって支えられるため、<重>の使用が好まれるのに対して、日本語は<連続体>のスキーマによって支えられるため、<強>の使用が好まれることが明らかになった。