2024 年 71 巻 p. 86-90
クビアカツヤカミキリは2011年に国内で初めて確認されて以降,各地でモモ,ウメ,サクラ等の樹木における被害が拡大している。栃木県では,2017年に県南西部のモモ園で被害が確認され,2024年4月時点で県北部まで発生地域が拡大した。本種は幼虫が寄主植物の樹皮下を食害することにより,最終的に樹木は衰弱・枯死に至る。被害を防止するため,果樹園では,成虫発生時期の殺虫剤の複数回散布,発生源となる被害樹の伐倒除去,寄生した幼虫の掘り取り等の対策が実施されているものの,非常に手間がかかる。また,園地以外の近隣における被害樹の対策徹底が課題となっており,地域における被害の発生は継続している。 そこで,樹木の被害発生防止を目的に,主な寄主であるモモの切り枝に対して,数種のネット状およびシート状の物理的資材を被覆処理することによるクビアカツヤカミキリの産卵および幼虫のふ化後穿入阻止効果について室内試験で検証した。その結果,3種類の資材で無処理区に対して,産卵数が70%以上減少することが確認された。さらに,供試資材のうち7種類の資材では,被覆処理によって幼虫の穿入痕数が大きく減少した。現地導入に際しては,被害抑制効果だけでなく,設置後の資材内部のフラスや成虫の視認性や資材コスト等の特性を使用場面に応じて考慮する必要があるが,クビアカツヤカミキリに対する物理的防除体系構築の一助となると考えられる。