2024 年 91 巻 4 号 p. 462-474
公教育は、一方で現代的諸課題に対処する中で他システムとの連携を求められ、他方で縮小の危機が迫り足元の基盤強化が言われるという二律背反の状況にある。本稿ではN.ルーマンの機能システム分化論を歴史的視座から展開し、教育システムが自立・完結性を備える要件を歴史の中に探ることで、その無意識的基底に⟨宙吊りの人間形成論⟩があることを明らかにする。しかし教育システムは純度を緩め、社会状況の中で異種混交と妥協することを繰り返してきた。戦後教育実践史からもこのダイナミズムを確認し、「危機」に浮足立つ前にこの宙吊り性をいかに引き受けるかを論じるのが公教育論の要諦であると結論した。