2022 年 53 巻 4 号 p. 147-152
杏林大学医学部肉眼解剖学教室は,良医の育成に役立つ解剖学教育を目指している。解剖学実習では,本学で開発した,ホルマリン・フリーで組織や関節の柔軟性が保たれるピロリドン固定法を用いて,「臨床手技を体験しつつ当該部位の構造を学ぶ」という新しいスタイルの解剖学特別実習の実現に向けて検討を重ねてきた。そして2022年度,麻酔科学教室と連携して解剖学実習にご遺体を用いた気管挿管ハンズオンセミナーを導入し,気管挿管手技を全学生に体験してもらうと同時に,口腔側からみた喉頭の構造を理解してもらうことができた。また,医学部と保健学部のコラボレーションにより解剖体のオートプシーイメージングに着手し,解剖学実習に全身CT・脳MRI画像を取り入れる「解剖学実習と医用画像読影の統合的教育」を開始した。この取り組みにより,人体構造の三次元的理解が深まり,CTとMRIの正常画像を系統的に学ぶ機会が得られ,学習意欲の向上につながっているようである。今後,医用画像読影能力の高い学生・医師の育成に役立つことを期待している。いずれも先進的な取り組みであり,今後改良を重ね,よりよい解剖学教育を実践していきたい。