杏林医学会雑誌
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53 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
市民公開フォーラム「新型コロナウイルス」
  • 倉井 大輔
    2022 年 53 巻 4 号 p. 117-119
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    2019年に発生した新型コロナウイルス感染症は,世界的大流行であるパンデミックを引き起こし,その流行は2022年現在も収束していない。この感染症は,感染力と重症度の点から医療体制への負荷が大きく,社会生活に多大な変化をもたらしている。今回のパンデミック発生以降,検査方法・治療薬・ワクチン・感染対策などの関連する分野は急速に進歩し,医療体制も整備された。しかし,ウイルス自体が変異を繰り返しているため,年に数回の定期的な流行を繰り返している。流行のピーク時には,通常医療が保てない状態となっている。2019年に発生した当初のウイルスと比べ,2022年初頭からわが国で流行しているオミクロン株は,陽性者に占める重症患者の割合は低下した。日本で普及したワクチンは重症化予防に効果があるが,感染予防効果が長期間は持続しない。そのため,一定数の患者が常に国内に存在する状況になっている。社会生活の維持のために,隔離期間の短縮など国民生活に影響を与える国が規定するルールの変更が度々行われている。社会を構成しているのは均一な集団でないため,「Withコロナ」に対し,すべての人が納得する解決策はない。基礎疾患を有する高齢者は重症化しやすく,健康な小児・若年成人は重症化しにくい。そのため,それぞれの立場や状況によって感染対策の重要度も異なる。「Withコロナ」のためには,大枠では国民や社会の合意形成と,細部では個人の判断が求められる。

  • 福川 尚克
    2022 年 53 巻 4 号 p. 121-123
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
  • 長友 禎子
    2022 年 53 巻 4 号 p. 125-129
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルスの感染経路は,家庭内感染が最も多いものの,職場内感染も多いことが知られている。そのため,職場における感染対策は感染拡大防止のみならず,職員の生命・健康保持にとって極めて重要である。
    マスク着用,手洗い・手指消毒,身体的距離の確保,換気,環境消毒など,様々の感染対策を組み合わせることがより効果的であるものの,職種や職場の作業環境・作業内容によっては,実施困難な感染対策も存在する。また,効果の割に労力がかかり過ぎる対策は,職員の疲弊にも繋がる。本稿では,産業医の立場から,職場の実態に即した感染対策について概説する。

特集『医学部基礎医学教室の最前線〜第1回 肉眼解剖学教室』
  • 長瀬 美樹
    2022 年 53 巻 4 号 p. 131-138
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    杏林大学医学部肉眼解剖学教室では,教員独自の研究と,臨床の教室,保健学部,他大学の研究者との幅広い領域の共同研究を進めている。本稿では,臨床解剖学研究として,本学で開発された,ホルマリンを含まず組織が柔らかく保たれる新しい解剖体固定法であるピロリドン固定法の特性解析と臨床手技研修・研究・医療機器開発への応用に関する研究,オートプシーイメージング研究,各教員が進めている基礎研究,メディカルイラストレーションについて紹介する。

  • 長瀬 美樹
    2022 年 53 巻 4 号 p. 139-145
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    肉眼解剖学は,これから医学の勉強を始めようという学生が講義と実習を通して医学の根幹となる人体の構造と仕組みを修得するための教科で,良医になるための重要な第一歩である。当教室では各教員がアイディアを出し合って医学生に最良の教育指導ができるよう,また学生のモチベーションを高められるよう,さまざまな試みを行っている。人体の複雑な3次元構造の理解を促すために,ペーパークラフト模型や模式図の描き方の動画,CT・MRIの連続断層動画を用意したり,知識の定着のために,確認テスト,記憶定着を促すアプリを用いた解剖学用語英単語や医用画像の課題などを配信している。また,臨床各科と連携して,臨床につながる特別講義・特別実習を導入した。成績優秀者・優秀班の表彰も行っている。リサーチマインド育成には,希望する学生に対して放課後や休み期間に研究指導し,日本解剖学会の学生セッションでの発表を目指してもらっている。本稿ではこうした取り組みについて紹介する。

  • 長瀬 美樹
    2022 年 53 巻 4 号 p. 147-152
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    杏林大学医学部肉眼解剖学教室は,良医の育成に役立つ解剖学教育を目指している。解剖学実習では,本学で開発した,ホルマリン・フリーで組織や関節の柔軟性が保たれるピロリドン固定法を用いて,「臨床手技を体験しつつ当該部位の構造を学ぶ」という新しいスタイルの解剖学特別実習の実現に向けて検討を重ねてきた。そして2022年度,麻酔科学教室と連携して解剖学実習にご遺体を用いた気管挿管ハンズオンセミナーを導入し,気管挿管手技を全学生に体験してもらうと同時に,口腔側からみた喉頭の構造を理解してもらうことができた。また,医学部と保健学部のコラボレーションにより解剖体のオートプシーイメージングに着手し,解剖学実習に全身CT・脳MRI画像を取り入れる「解剖学実習と医用画像読影の統合的教育」を開始した。この取り組みにより,人体構造の三次元的理解が深まり,CTとMRIの正常画像を系統的に学ぶ機会が得られ,学習意欲の向上につながっているようである。今後,医用画像読影能力の高い学生・医師の育成に役立つことを期待している。いずれも先進的な取り組みであり,今後改良を重ね,よりよい解剖学教育を実践していきたい。

杏林大学学位論文要旨および審査要旨
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