九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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急性期病院における脳梗塞発症時の大腰筋面積が転帰に及ぼす影響
~腹部CTを用いた後ろ向きコホート研究~
*白土 大成*橋本 幸成*濱田 則雄*永利 聡仁*吉田 大輔
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キーワード: 脳梗塞, PMI, 転帰
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p. 22

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抄録

【目的】

近年、サルコペニアに関する報告は多く、生命予後との関連について分析された外科領域の報告や、自宅退院などの転帰に影響するという回復期脳卒中例の報告がある。しかし、急性期の脳卒中患者に対してサルコペニアと転帰の関連を検討した報告はみられない。急性期病院では在院日数の短縮が進んでおり、チーム医療において理学療法士が自宅退院の可否を検討する機会は少なくない。そこで本研究では、急性期脳梗塞患者を対象として、サルコペニアの指標として大腰筋面積を測定する方法を用い、サルコペニアと転帰に与える影響について検討することを目的とした。

【方法】

対象は2014年1月~2019年2月までに、当院に脳梗塞発症後3日以内に入院し、脳梗塞急性期治療を行い、リハを施行した803例のうち、入院時に腹部CTが撮像されていた46例とした。メインアウトカムは、腹部CTの第3腰椎レベルの大腰筋面積を身長の2乗で除した値(PMI)と転帰先である。その他の項目として年齢、性別、身長、体重、入院前modified Rankin Scale(mRS)、病型分類、入院時NIHSSを後方視的に調査した。これらの項目に対し、自宅退院群と転院群の2群間で比較を行った。次に、単変量解析で有意差が認められた項目に対して、自宅退院の可否を目的変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】

対象者の中で自宅退院群は14名。転院群は32名であった。2群間を比較した単変量解析の結果、PMI(P < 0.05)、入院時NIHSS(P < 0.05)、入院前mRS(P < 0.05)で有意差を認めた。また、自宅退院の可否を目的変数とし、性別、年齢、入院時NIHSS、入院前mRSで調整した多重ロジスティック回帰分析の結果、PMIのオッズ比(95%信頼、P値)は0.384(0.169~0.873、P < 0.05)であった。

【考察】

自宅退院群は転院群と比較して、PMIは高く、入院時NIHSS、入院前mRSは低い結果であり、PMI、入院時NIHSS、入院前mRSが自宅退院の可否の独立した因子であった。急性期病院からの転帰予後における予測因子は血清アルブミン値、NIHSS、高次脳機能障害の有無、Barthel indexなどが報告されている。本研究では基本属性、神経症状重症度、発症前の能力障害で調整した回帰分析においてもPMIが自宅退院の可否に関連する独立した因子であった。急性期病院における在院日数の短縮が進む中、脳梗塞発症時のサルコペニアは自宅退院の可否に影響を与える可能性が示唆された。

【まとめ】

脳梗塞発症時のPMIは、自宅退院の可否に独立して関連しており、発症後早期からの転帰予測に有用な評価法である可能性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し、事前に所属施設の倫理審査委員会の承認を得た(承認番号150)。

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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