九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2019
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ストレス課題後のストレッチポールエクササイズが生理的指標に与える影響
*寺口 拓真*松野 聖人*段 亜莉沙*今村 拓海*金丸 元紀*柴 彩女*皆川 瑞貴*峯崎 一真*安田 凌*松山 裕*二宮 省悟
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p. 32

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抄録

【はじめに】

医療現場では,安価で簡便に行えるツールとしてストレッチポール(以下,SP)を用いたエクササイズ(以下,B7)の効果は,脊椎のリアライメント,関節可動域改善,胸郭可動性改善,立位バランス改善,柔軟性の向上などに加え,交感神経の優位性が低下したと報告されている(平沼ら,2008).そこで本研究は,ストレス状態を交感神経優位な状態であると定義し,生理的指標(血圧,脈拍,血流量)から,B7リラクゼーション効果を検証することを目的とした.

【対象・方法】

対象は健常な男女60名(平均年齢20.6±1.2歳)とした.生理的指標を擬似的に乱すため,ストレス課題(ストループ課題)を行った.安静10分後にストレスを与える群として,実験群(B7施行群:A群),対照群(SP上背臥位安静:B群,床上背臥位安静:C群)の計3群を,無作為に各群20名ずつ設定した.測定は,安静10分後,ストレス課題後,実験後に行った.測定機器は,自動血圧測定器(HEM-7220:オムロン)と超音波画像診断装置(Nemio-XG SSA-580A:東芝社製)を使用.測定肢位は背臥位.血圧・脈拍は,左上腕動脈にて測定した.血流量は,プローブを右橈骨動脈の走行に対して90°に当て測定した(前田ら,1990).各群の各項目前後変化量を算出し,比較検定にはsteel-dwass検定を用いた.統計処理はIBM社SPSSver25を使用し,有意水準は5%とした.各群を対象に級内相関係数(以下,ICC)を確認した.

【結果】

血圧・脈拍・血流量測定のICC(1,3)は0.777~0.952であった.血圧・血流量の変化量は,収縮期血圧(A群0.55mmHg,B群2.45mmHg,C群0.60mmHg),拡張期血圧(A群-0.90mmHg,B群-0.10mmHg,C群2.30mmHg),血流量(A群-0.00135L/min,B群0.00200L/min,C群0.00095L/min)ともそれぞれに有意差は認められなかった.しかし,脈拍は,安静10分後と実験後のBC 群間(B 群-0.80bpm,C 群 5.35bpm)において,有意差が認められた (p < 0.05).

【考察】

結果より,脈拍に関して安静10分後と実験後のB群とC群の変化量において有意差が認められた.これはSP上で背臥位を一定時間継続したため不安定な状態のため十分なリラクゼーション効果が得られなかったことが示唆された.また,脈拍に関しては,B7実施群においてゼラニウムを用いた自律神経系の研究と同様な生理的指標に対するリラクゼーション効果の傾向が示唆された(大和田ら,2015).今後はサンプルサイズを拡大し,また十分な擬似的ストレスの設定方法など,さらなる検討により臨床的有用性を確認していきたい.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者にはヘルシンキ宣言に沿って研究の主旨及び目的を十分に説明し,書面にて同意を得た.本研究は所属の大学倫理委員会の審査を受けて実施した(承認番号:30-009).なお,本研究において開示すべき利益相反関係にあたる企業等はない.

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© 2019 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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