九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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当院における下肢装具に関するアンケート調査
普及の問題点・課題の抽出
*篠塚 晃宏
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キーワード: 下肢装具, 普及, アンケート
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p. 107

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抄録

【はじめに】

脳卒中ガイドライン2015 で示されるように、下肢装具は理学療法士( 以下PT) や作業療法士( 以下OT) が脳卒中片麻痺患者の治療で重要なものであるが、病院や施設により備品がない所や、下肢装具の使用に消極的なPT やOT も多い。

【目的】

下肢装具の備品が十分になく、使用・作成頻度の少ない当院で、アンケートを用いて普及の問題点・課題を明らかにし、今後の治療の選択肢拡大を図っていくため。

【方法】

当院( 急性期・回復期・包括) のPT31 名、OT18 名にアンケート調査( 無記名・所属記載) を実施し、44 名より回答があった( 回収率90%)。内容は、下肢装具に対して「(1)興味があるか、(2)イメージ( 複数可)、(3)知識・技術があると思うか、(4)治療において必要か、(5)使用しているか、(6)使用したいと思うか( (5)で使用していないと答えた者のみ回答)、(7)どの場面で有用か(FIM 運動項目より複数可)、(8)作成は発症からどの時期が適当か、(9)勉強会に参加したことがあるか、(10)どのように難しく感じているか( 複数可)」の10 項目であり、各項目に選択肢・自由記載を設けた。

【結果】

(1)では「興味がある」が78% と多かった。(2)では多い順に「早期立位に効果あり」(84%)、「早期歩行に効果あり」(64%)、ネガティブな意見として「費用負担が大きい」(39%)、「感覚が悪くなる」(32%) 等がみられた。(3)では「知識・技術がない」が90%、(4)では「必要である」が95% を占めた。(5)では「使用しない」が73% と多く、(6)では「使用したいと思う」が78% であった。(7)では職種で差異がみられ、「移乗で有用」が脳神経班PT で17%、OT で66% であった。(8)では部署で差異がみられ、急性期PT では「1 か月未満」が多く(45%)、回復期・包括PT では「1 ~ 3 か月」が多かった(67%)。(9)では「あまりない・全くない」が80% を占めた。(10)では多い順に「種類の選定」(84%)、「作成時期」(80%)、「作成後の進め方」(57%)、「義肢装具士とのやり取り」(41%) であった。

【考察】

備品がなく装具療法が定着していない当院でも下肢装具に興味があり、良いイメージを持っている者が多い。(7)の差異は、脳神経班PT は移乗時の筋収縮促通を重要視し下肢装具使用を避け、反対にOT は動作の安全性を優先した結果と考えた。(8)の差異は、当院では回復期でのみ作成しており、作成するかどうか迷い3 ~ 4 か月で決断している結果と考えた。これらは「装具を使用しない治療が最良」「作成しても後で装具がなくても回復したのではないかと思う」との意見が散見し、治療用装具の概念が少ないことが窺えた。(3)(5)(9)の結果より、下肢装具が必要だと思っているが使用はせず、知識・技術不足を感じているが勉強会に参加していないことが明らかとなった。原因の意見として「活用している場面が少なく、良かった時、悪かった時の違いがわからない」「症例に使うタイミング、適応がわからない」「備品があれば選択肢として装具を使ってみようとなる」等が挙げられた。つまり、備品もなく使用する者も極稀であるため、下肢装具の重要性は知っていても使用する機会、使用・勉強に対する意欲が低くなっていると考えられた。当院ではこのアンケート結果を職員にフィードバックし、長下肢装具の備品の購入に至った。今後の課題として更なる備品の購入、治療用装具としての使用の促進、使用マニュアルの作成、義肢装具士との連携、院内勉強会の開催や外部勉強会への参加の促進、作成後のフォロー( 装具ノート等) が考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】

ヘルシンキ宣言に基づき説明を行い、アンケート調査に了承が得られた者へ実施した。

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