主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 108
【はじめに】
脳卒中片麻痺者に対する下肢装具療法は、ガイドライン等の推奨により、歩行再建の取り組みとして多く用いられる手段の一つである。一般的に理学療法士( 以下、PT) が装具の選定や導入時期の決定に携わることが多い現状であり、装具作製に至る臨床意思決定(Clinical Decision Making:CDM) に苦慮するPT は少なくない。そのため、若手PT は熟練PT の援助を必要とするが、装具作製の有無や種類の選定、導入時期に関する一定の見解は得られておらず、CDM に関わる要素に関しても不明瞭な点が多い。そこで、本研究では重症度の異なる脳卒中片麻痺者3 例の歩行動画からどのようなCDM にて装具作製の判断をするのか、回復期リハビリテーション病棟に勤務するPT を対象にアンケート調査を行った。今回は、装具作製と未作製で最も意見が分かれた症例に関して、下肢装具作製に対するCDM の質的分析を行う。
【方法】
対象は当院の回復期リハビリテーション病棟に勤務するPT53 名。アンケートは無記名式とし、内容は診療情報及び動画の提示に加えて、質問項目として、各症例の装具作製理由、または未作製理由の自由記載とした。動画は矢状面上での装具を用いない歩行動画( 杖の使用は許可) を使用し、症例は軽症例( 右片麻痺、発症後52 日目に再梗塞、再梗塞発症後91 日、FAC:3 点、下肢FMA:27 点)、中等度例( 左片麻痺、発症後114 日、FAC:2 点、下肢FMA:13 点)、重度例( 右片麻痺、発症後25 日、FAC:1 点、下肢FMA:7 点) の重症度が異なる3 名とした。自由記載の内容分析は、KHcoder を使用して、形態素解析により分かち書きを行い、各単語の出現回数、共起ネットワーク分析を行った。出現頻度・共起ネットワーク分析の結果から、装具作製理由と未作製理由におけるCDM の相違について検討した。
【結果】
回答率は79%(42 名)。中等度例、重度例に対して装具を作製すると回答したPT は90%以上であった。一方、軽症例に対して装具を作製すると判断した比率は48%であり、作製する装具は、GSD:35%、オルトップ:30%、GS:25%であった。作製理由の頻出語句では、「ロッカー機能」「改善」「Toe clearance」等が上位となり、未作製理由の頻出語句では、「股関節」「外旋」「足関節」「背屈」等が上位となった。共起ネットワーク分析の結果、軽症例での作製理由では「麻痺側遊脚期のToe clearance の確保」、「IC で踵接地の促し」、「歩行速度の改善」のsubgraph が得られ、未作製理由では「足関節背屈運動が可能」、「股関節外旋位で継手の装具は適応しない」、「現状の歩行で可能」、「歩容の改善を優先する」のsubgraph が得られた。
【考察】
中等度例、重度例では装具を作製するという回答が9 割を超え、作製有無に関するコンセンサスが得られているが、軽症例では作製有無の意見が分かれていたため、CDM の相違については軽症例のみ分析をした。軽症者例に装具を作製すると回答したPTは、頻出語句やsubgraph から、現在の足関節機能では不十分であり、遊脚期のクリアランスや歩行速度、ロッカー機能の改善のために装具が必要という判断をしていると考えられる。一方で未作製と回答したPTは歩行障害の特徴が装具に適していない点や、現在の足関節機能や歩行機能で十分という判断をしており、装具作製有無の判断には、歩行分析スキルやメカニズムの理解、装具に関する知識の有無、問題分析から抽出した結果の価値付け等が介入方針の決定に左右していると考えられる。今後は経験年数も含め、CDM の相違について比較分析を行う必要がある。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認を受け、アンケートの冒頭に研究の趣旨と内容説明実施し、同意を得たうえで行った。