九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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起立動作で非対称性パターンを呈する右大腿骨骨幹部骨折術後症例に対するHybrid Assistive Limb LumbarType を用いた介入報告
*香田 啓利*大田 瑞穂*中嶋 佳晃*田中 愛菜
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p. 109

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抄録

【目的】

今回、右大腿骨骨幹部骨折の術後後遺症により、重篤な筋力低下と関節可動域制限および起立・歩行困難な症例を担当した。症例の下肢筋力と関節可動域制限は改善していったが、大腿部の疼痛と動作時の疼痛への恐怖心から起立動作場面で患側下肢への荷重が不十分な非対称性パターンを呈していた。そこで、サイバーダイン社のHybrid Assistive Limb Lumbar Type(以下、HAL 腰タイプ)を用いた運動療法を行い、対称性活動に対する介入を行った結果、短期間で起立動作の対称性が改善されたため、今回は症例の身体機能評価および動作解析評価を基に介入効果に関する報告を通常の理学療法と比較して行う。

【方法】

症例は60 歳代男性。2020 年10 月に右大腿骨骨幹部骨折を受傷し、2 日後に骨接合術(髄内釘固定術)を施行。同年10 月に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院し、66 日間理学療法を施行した症例。研究デザインは、通常理学療法を行う1 週間(Control 期間) とHAL 腰タイプを用いた運動療法を行う1 週間(HAL 期間) のAB デザインとし、各期間の前後で評価と動作解析による起立動作の計測を実施した。Control 期間の具体的な実施内容は、座位での骨盤前後傾斜運動、患側下肢への荷重練習、起立運動、スクワット運動を実施し、HAL 期間ではHAL 腰タイプを着用して座位での骨盤前後傾斜運動、座位での体幹前後屈運動、起立運動、スクワット運動、立位での体幹前後屈運動とし、生体電位は対側脊柱起立筋から抽出、アシスト量は症例が心地よく動ける程度とした。評価項目は関節可動域測定、徒手筋力テスト、疼痛検査:NRS(起立動作時の大腿部の運動時痛)、動作分析評価として三次元動作解析装置(VICOMMX) を用いた起立動作の計測を実施した。動作解析の分析方法は起立動作をSchenkman の分類で相分けし、第2 相における両側股関節・膝関節伸展モーメント最大値、床反力鉛直成分の最大値を抽出して、患側の値から健側比率(( 患側/ 健側) × 100) を算出した。

【結果】

評価結果は介入前、コントロール期間後、HAL 期間後の順番で記載する。疼痛はNRS7、7、3、右膝関節屈曲可動域は135°、155°、155°、右膝関節伸展筋力はMMT3、4、4 となった。動作解析による評価結果では、股関節伸展モーメント比率は59.9%、53.9%、86.7%、膝関節伸展モーメント比率は46.8%、28.6%、63.3%、床反力鉛直成分比率は51.3%、52.5%、83.3%、起立動作の相別時間(第2 相)は0.265 秒、0.293 秒、0.073 秒となった。

【考察】

起立動作場面における運動時痛はHAL 期間で大きく改善した。また、症例の内省として「HAL 腰タイプ装着時の方が起立動作を行いやすく、疼痛も減少した」と報告を受けており、HAL 期間では患側下肢への荷重が行いやすい状況であったと考えられる。起立動作の第2 相では、離殿後に身体重心が前方移動から鉛直上方への移動に切り替わり、股関節・膝関節の筋活動が最も必要となるフェーズである。HAL 腰タイプは生体信号を元に股関節伸展トルクをアシストすることが可能であり、股関節伸展筋活動のアシストを段階的に行う事で、患側への荷重量を増大させつつ、疼痛を増悪させない条件で運動学習が行えたと考えられる。これにより両下肢への荷重が可能となったことに加え、疼痛が軽減されたことで、関節の筋活動の発揮が円滑になり、さらに股・膝関節伸展モーメント比率が増大したことから第2 相の起立時間が速くなったと考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し,当院の倫理審査員会の承認を得た(承認番号21-254)。 また研究の実施に際し,症例には研究について十分な説明を行い,同意を得た。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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