九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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くも膜下出血患者における座位遅延因子の検討
脳血管攣縮期を対象に
*前田 明人*廣重 愼一*陶山 一彦
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p. 129

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抄録

【目的】

脳卒中の急性期では早期に座位・立位を再獲得することは、効果的なガス交換や嚥下、合併症予防や長期的な機能転帰が良好であると報告されている。しかし、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(以下SAH)患者は、脳血管攣縮予防のため厳重な水分管理等の全身管理を要し、頭蓋内圧コントロールのため脳槽ドレーンや多くのライン類が装着される。そのため、脳血管攣縮期( 以下spasm 期) では、安静や体位の制限に加え、様々な合併症が発生することから、座位開始が遅延する症例を多く経験する。今回、SAH 患者のspasm 期における座位開始の遅延因子を明らかにし、この期における当院の急性期リハビリテーションの課題を考察したのでここに報告する。

【対象】

2017 年3 月〜 2021 年3 月までに当院集中治療病棟に入室した脳動脈瘤破裂によるSAH 患者74 名のうち、手術適応外、入院前m odified Rankin Scale(以下mRS)4 以下、神経筋疾患・脳血管疾患の既往のある者、死亡退院の12 名を除外した62 名を調査対象とした。

【方法】

診療録より(1) 年齢・性別・WFNS 分類・術式( コイル塞栓術・クリッピング)・入院前、退院時mRS・術後リハビリ開始までの日数・発症から座位開始までの日数。 (2)spasm 期(発症から14 日以内に設定)合併症(呼吸器感染症/尿路感染症/ 消化管出血/ 髄膜炎/ 水頭症/ 深部静脈血栓症/ 褥瘡/ せん妄/症候性脳血管攣縮)の有無を調査した。spasm 期に座位を開始した群を早期群、15 日以降に座位を開始した群を遅延群とした。早期群・遅延群を目的変数とし(1)(2) の各調査項目を説明変数とし、Mann-Whitney のU 検定・χ 2 検定を用いて比較した。また(2)で有意差を認めた合併症の発生までの日数を調査した。次に同じ目的変数で(1)(2) より有意差を認めた項目を説明変数としロジスティック回帰分析にて分析した。尚、統計解析にはEZRver1.38 を使用し、統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

対象者の中央値の年齢は68.5 歳、男性18 名、女性46 名、WFNS 分類はGrade I 17 名II 17 名III 3 名IV 16 名V 9 名であった。早期群は34 名(55%)、遅延群は28 名(45%) であり、発症から座位開始までの日数は早期群10 日、遅延群20 日であった。Mann-Whitney のU 検定の結果、(1) の項目から有意差は認めず、(2) の項目からは呼吸器感染症(p

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき対象者における個人情報の保護など十分に留意し、匿名化した上で実施した。

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