九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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回復期リハビリテーション病棟脳卒中患者の退院時排泄動作自立に関連する入院時身体機能の特性
*渕瀬 義行*三浦 恭平*新宮 智也
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p. 128

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抄録

【背景と目的】

脳卒中患者において、排泄動作の自立は自宅復帰に影響する重要な因子の一つである。回復期脳卒中患者の排泄動作自立予測に影響する因子として、年齢、発症から入院までの日数、Functional Independence Measure(FIM)のトイレ移乗・問題解決が報告されている。しかし、合併症や病前要介護状態等の基本属性や、筋力や立位バランス等の身体機能や認知機能評価も含めて検証した研究は今のところ報告されていない。本研究は、回復期リハビリテーション(リハ)病棟の脳卒中患者における排泄動作自立例の特性と関連因子を検証することを目的とした。

【方法】

研究デザインは、後ろ向きコホート研究であり、2017 年9 月から2020 年9月に当院回復期リハ病棟に入退院した65 歳以上の脳卒中患者を調査対象とした。除外基準は、入院時にFIM のトイレ動作とトイレ移乗がいずれも6 点以上の患者、意識障害や認知症により評価項目の測定が困難な患者とした。調査項目は対象者の基本属性(年齢、性別、脳卒中分類、入院前の要介護状態、脳卒中発症から当院入院までの日数、併存疾患〔Charlson comorbidity Index:CCI〕)、入院時の下肢Brunnstrom recovery stage(BRS)、握力、FunctionalReach Test(FRT)、Mini-Mental State Examination(MMSE)、入退院時のFIMとした。アウトカムは排泄動作自立とし、FIM のトイレ動作とトイレ移乗がいずれも6 点以上の患者と定義した。対象者を退院時の排泄動作自立の可否により2 群に分類し、基本属性や各種評価を2 群間で比較した。検定は対応のないt 検定、Mann Whitney のU 検定、χ ² 検定を実施した。また、排泄動作自立を目的変数とした二項ロジスティック回帰分析を実施した。説明変数は、臨床的観点から年齢、性別、要介護状態、発症から入院までの日数、CCI、下肢BRS、握力、FRT、MMSE、FIM 合計点とした。全ての検定において有意水準は5%未満とし、EZR version1.42 を使用した。

【結果】

解析対象者は228 名(平均80 歳、女性56%、脳梗塞70%、脳出血25%、発症から入院までの日数中央値22 日)、うち排泄自立群は120 名(53%)、介助群は108 名(47%)であった。自立群は介助群より年齢、入院前の要介護状態、脳卒中発症から入院までの日数、CCI が有意に低値であり(P < 0.001)、下肢BRS、握力、FRT、MMSE、FIM 合計点は有意に高値であった(P < 0.001)。年齢( オッズ比〔OR〕:0.918,95 % 信頼区間〔CI〕:0.864-0.976)、握力(OR;1.110,95% CI:1.020-1.200)、BRS V - VI:reference BRS I - IV(OR:0.153,95% CI:0.036-0.648)、麻痺なし:reference BRS I - IV(OR:0.252,95%CI:0.075-0.845)、FIM 合計点(OR:1.090,95% CI:1.050-1.140)は退院時排泄自立の独立した説明因子であった。一方、要介護状態や発症から入院までの日数、CCI、MMSE など、他の因子は関連を認めなかった。

【考察】

発症前の要介護状態や発症から入院までの日数、CCI、MMSE が高値であっても、年齢が若く、入院時の握力や下肢の麻痺、ADL 能力が保たれていれば、排泄動作が自立する可能性があると考えられる。握力や下肢BRS は、簡便に実施できる脳卒中患者の機能評価であり、これらの評価結果と年齢、FIM 合計点から排泄動作自立可否の可能性を検討できることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従って計画し、長崎リハビリテーション病院倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:R3-07)。本研究はオプトアウト形式を採用し、研究対象者および代理人が拒否する十分な機会を保障することによって倫理性を担保した。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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