主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 27
【はじめに・目的】
今回、訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)にて児童期に脳幹部出血を発症した症例に対し、小学校復学から中学校就学までの関わりを経験したので、ここに報告する。
【症例紹介】
本症例は脳幹部脳動静脈奇形破裂による脳幹部出血により、四肢麻痺を呈した10 代男児である。X 年3 月5 日発症。入院治療、リハビリテーションを経て、同年6 月4 日退院。これまで通っていた小学校へ戻りたいとの強い思いがあり、復学に向けてのリハビリを希望。6 月7 日より訪問リハ開始となる。
【経過】
訪問リハ介入時の評価では、左上下肢は不全麻痺で失調症状あるもほぼ実用レベル。右上下肢は麻痺が残存。体幹の失調が著明にみられる。寝返り、起き上がりは自力にて可能。端座位、立位ともに体幹保持が難しく、介助が必要。歩行は短距離なら介助にて可能。普段は車椅子使用を使用し、操作は可能。全身耐久性に乏しく、長時間の座位は困難な状況。児は気分にムラがあり、リハビリに対しての意欲も低い。本人のやる気を徐々に引き出しながら週3 回の訪問リハを実施。介入時の問題点としては、全身耐久性の低下、体幹失調に伴うバランス能力の低下、受け入れる学校側の対応や環境が挙げられた。まずは復学に向け、両親・学校職員・教育委員会・町職員・支援相談員を交え話し合いを行った。セラピストが児の身体状況等を説明し、必要な改修や備品の準備、教室配置等を皆で検討した。また、学校職員には実際の動作をみてもらい、介助方法等の助言を行った。介入1 ヶ月後に母親付添で2 時間程度の学校生活を開始。移動やトイレの介助、学習面でのサポートが必要であった。支援員が配置され、9 月からは通常の学校生活を送る事となった。小学校卒業後は児・両親ともに普通中学校入学を希望。関係機関で協議を行い、対応を検討。中学校へ進学することができた。
【考察】
障害児の普通学校への就学においては、児の障害の程度や学校側の人的・物的環境が大きく関係してくる。今回の関わりでは、学校側の受け入れに対するとまどいや不安が感じられ、専門職として学校環境整備や介助方法等に対して期待される事が大きかった。児の身体機能改善と関係機関との協働により円滑な復学支援に繋がった。今後も進学や就職などに向け、自己決定を尊重した多職種協働による介入が重要になると考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、本人と家族に十分な説明を行い、書面上にて同意を得た。