九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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ストレッチポールひめトレが運動機能に与える即時効果
垂直跳びとリーチ動作に着目して
*吉良 彩加*森永 玲実*宮本 夏子*伊藤 諒哉*瀬川 亜佑美*高田 英理加*徳田 里香*副島 理*二宮 省悟
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p. 63

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抄録

【目的】

骨盤底筋群を刺激することによる尿失禁予防・改善を目的にストレッチポールひめトレ(LPN 社製:以下SPH) という商品が開発された。これは、尿失禁の改善、姿勢やバランスに関して使用者から良好な反応を得ている。しかし、SPH が身体の運動機能にどのような影響を与えるかを報告した研究は少ない。そこで本研究は、SPH を使用した運動( 以下ひめトレファイブ) を行い、垂直跳びとリーチ動作に着目し、運動機能( 跳躍高、大腿直筋筋活動、リーチ距離及び静的・動的バランス) にどのような即時効果を与えるのか検証することを目的とした。

【方法】

対象は、同意を得られたA大学の学生男女62 名である( 平均年齢21.4 ± 1.0歳)。このうちA 群( ひめトレファイブ群:21 名)、B 群( 運動のみ群:21 名)、C 群( 何もしない群:20 名) を無作為に振り分けた。垂直跳びは、ジャンプDF( 竹井機器工業製) を用いて跳躍高(cm) を測定した。筋活動は、NORAXON 筋電計( 酒井医療株式会社) を用い、跳躍動作時の左右の大腿直筋の筋活動量を測定した。筋活動量は、等尺性最大随意収縮(MVC)を用いて正規化(% MVC) し算出した。静的・動的バランスの測定は、重心バランスシステムJK101 II ( ユニメック社製) を用い、足圧中心の軌跡(cm) を記録した。静的バランスは軽度開脚立位( 両足底内側間10 ㎝ ) での静的立位姿勢を40 秒間とらせ、後半30 秒間を測定した。次に動的バランスは、軽度開脚立位、両肩90°屈曲、肘伸展、手関節中間位を開始肢位とし、その状態から前方への最大リーチを行わせた。その際、前方最大リーチ姿勢で10 秒間保持させ、リーチ距離(mm) 及び足圧中心の軌道( 足圧中心の総軌跡長、X・Y 方向軌跡長、単位軌跡長、最大振幅、動揺平均中心変位:cm) を、介入前後で測定した(X 方向=左右方向成分、Y方向=前後方向成分)。統計学的解析は、Shapiro-wilk 検定にて正規性を確認後、F 検定、T 検定を用いて各評価項目における介入前後の比較を行った。また各グループ間の比較は、一元配置分散分析、Kruskal-Wallis 検定を行い、有意差がみられたものに関しては事後検定としてSteel 法を用い、多重比較を行った。全ての統計解析はExcel 統計ver3.21 を使用し有意水準は5%とした。

【結果】

跳躍高、静的・動的バランス、リーチ距離の検者内信頼性は、級内相関係数(ICC)にて算出した。跳躍高、静的・動的バランス、リーチ距離はそれぞれ ICC(1.3)=0.995、0.682、0.926 であり、 Landis らの分類によりmoderate ~ almost perfect の信頼性を認めた。跳躍高では、A群(0.4 ± 2.5cm)、B群(-0.6 ± 2.1cm)、C群(-1.2 ± 2.4cm)となり、A 群がC 群に比べ有意に向上した(P=0.039)。また、跳躍時の大腿直筋筋活動変化量の左右比較においては、A 群(0.2 ± 2.4% )、B 群(0.6 ± 2.1% )、C 群(0.8 ± 2.5% ) となり、A 群、B 群、C 群の順で左右差が減少した。リーチ距離及び静的・動的バランスは、群内比較、群間比較の全てにおいて有意差は認められなかった。

【考察】

A 群の跳躍高の向上や大腿直筋の筋活動量の左右差が減少したことから、ひめトレファイブ群は左右どちらかに偏っていた筋活動量が均等になり、垂直方向へ跳躍できたことが示唆された。つまり、SPH を使用することで筋活動の左右バランスが協調され、効率的なジャンプ動作が行われ、跳躍高を向上させるという即時効果が得られることが推測された。なぜ筋活動の左右差が協調されるのかについては、今後研究を進め、多角的な分析を行って行く必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究に際し、ヘルシンキ宣言に基づき、研究協力施設の倫理審査員会の承認を得て実施した( 承認番号:02-008)。対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。なお、利益相反に関する開示事項はない。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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