九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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バックスクワットの動作速度と床反力の関連性
*砂川 伸也*渡部 果歩*西山 裕太*小関 弘展
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p. 79

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抄録

【背景】

バックスクワット法は,膝関節屈曲時に膝蓋骨が足趾前縁より前に出ないスクワット動作の一手法であり,膝関節や脊椎への負担が少ない下肢筋力強化運動として,運動器疾患のリハビリテーションやロコモティブシンドローム予防など幅広く活用されている。これまで,床反力計や3 次元動作解析装置を用いたバックスクワットの運動力学的研究は散見されるが,運動強度の重要な要素である動作速度に着目して床反力を分析した先行研究は渉猟し得ない。

【目的】

本研究では,バックスクワットの動作速度の違いが床反力に与える影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象者は健常成人11 名(男性8 名,女性3 名)であり,平均年齢24.8 ± 5.3歳であった。過去に運動器疾患の既往歴がある者は除外した。対象者は,アニマ社製4 点支持型設置式フォースプレート(MG-1090)上に肩幅と同じスタンス幅で立ち,足部は平行,上肢は腕組み肢位とした。バックスクワットの下降は膝関節屈曲60°までとし,下降相(屈曲相)と上昇相(伸展相)の動作時間は同比率とした。バックスクワットの速度条件を振り分けるため,1 回にかかる時間を2 秒,4 秒,6 秒,8 秒,10 秒(以下,2s/ 回~ 10s/ 回)の5条件に設定した。対象者に十分な説明と動作指導を行った後,各条件で3 回ずつバックスクワット動作を行い,2 回目のデータのみを分析対象とした。データ処理方法について,フォースプレートから得られた床反力値を屈曲相前期・後期,伸展相前期・後期の4 つの運動期に分け,体重で正規化した。統計ソフトはStatview J 5.0 を使用し,各動作速度間の床反力最大値,最小値を一元配置分散分析とBonferroni / Dunn 法による多重比較検定で統計学的に比較した。有意水準は5%とした。

【結果】

床反力の最大値は,全ての速度条件において屈曲相後期と伸展相前期に観察され,2s/ 回群が他群に比較して有意に高かった。また、最小値では,全ての動作速度において屈曲相前期と伸展相前期で観察され,2s/ 回群は他群よりも有意に低値を示した。

【考察】

バックスクワット動作では,屈曲相後期から伸展相前期にかけて身体(重心)の移動が下降から上昇へと方向が転換されるため,屈曲相後期では鉛直方向への移動を減速させ,伸展相前期では重力に対抗して挙上方向へ加速させる必要がある。特に,2s/ 回群では急激な減速・加速が必要となるため,他群に比較して床反力最大値が高くなったと考えられる。また,4~ 10s/ 回群での差が認められなかったことから,膝関節屈曲60°までのバックスクワットを4 秒以上かけて行えば,急激な加速・減速は起こらず、過剰な床反力は生じないと言える。床反力最小値について,屈曲相前期は動作の最初期であり加速度が鉛直方向に作用し,また伸展相前期では下肢伸展後の上向きへの加速が生じる。いずれも慣性の働きにより床反力が低値となり,特に2s/ 回群は急激な動作により慣性力が強く作用したため有意に低値を示したと考えられる。

【まとめ】

本研究にて,バックスクワットの動作速度と床反力の関係性を運動期ごとに明らかにした。床反力は動作に必要な下肢筋力の総和と考えられるため,関節疾患を有する症例や下肢筋力が不十分な症例にバックスクワット運動を行う場合は,急激な加速・減速に伴う過剰な床反力の増減を避けることを意識しながら指導するべきである。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき,対象者に本研究の内容と目的を文書及び口頭にて説明し,研究参加への同意を得た。

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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