主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 92
【目的】
当院は,感染症指定医療機関としてCOVID-19 感染患者の治療を行っている.入院時に軽症であっても突然重症化し人工呼吸器管理が必要となる患者には,鎮静下で腹臥位療法を積極的に実施している.また,ハイフローセラピー(ネーザルハイフロー:NHF)にて管理される患者もいるが,基本的には鎮静下ではないため,腹臥位療法を実施することは患者にとって負担が大きい.今回,COVID-19 感染,急性呼吸不全患者に対し,NHF 管理下に体位呼吸療法を実施し,気管内挿管を回避できた症例を報告する.
【症例】
診断名: COVID-19 肺炎,急性呼吸不全.PCR 検査にて陽性,発熱と呼吸困難も伴うことから当院へ救急搬送され入院となった70 歳台女性.
【経過】
第1 病日より鼻カニューラ1.0L/min にて酸素療法開始.第4 病日に著しい酸素化の低下を認め,急性呼吸不全と診断.酸素療法のデバイスをNHF に変更し,流量30L/min,FiO2 60% にて開始. 第5 病日,体位呼吸療法を主とした理学療法の指示あり開始となった.胸部レントゲン上両肺野にびまん性の網状影を認め, 聴診上両肺野の呼吸音低下,細かい断続性ラ音を聴取. 酸素化の評価はP/F 比を用いたが,動脈血液ガス検査は実施されなかったため酸素解離曲線からPaO2 を予測して計算した.NHF FiO2 70% にてSpO2 92%,P/F 比は97 であり重度の呼吸不全状態であると判断し,前傾側臥位での管理を開始した.実施直後SpO2 99%と即時効果あり.呼吸音や呼吸運動の変化はないが自己喀痰が可能となり呼吸苦も軽減した.病棟スタッフと協議し, 仰臥位を禁止し積極的に前傾側臥位をとるようにした.第6 病日はNHF FiO2 60% にてSPO2 90%,P/F 比は100 とわずかに改善.悪化もないため,引き続き前傾側臥位を継続した.この頃より長時間の前傾側臥位姿勢の影響で腰部や肩の疼痛も認めたため,疼痛を配慮し完全側臥位も併用した.第10 病日にはNHFFiO2 60% にてSpO2 94%,P/F 比は126 まで改善がみられた.しかし,腰部痛がさらに増強したため前傾側臥位の継続が困難となった.そこで,代替手段として前傾側臥位と同様の効果を得る姿勢は何かないかと理学療法士間で模索した. 精神面や身体面を考慮し,テーブルを利用した前傾位での端座位を実施した所,「これなら腰も肩も痛くないから続けてできる」とあり採用した.実施後,室内気でもSpO2 100%,P/F 比は300 台と大きく改善し十分効果があると判断した.第11 病日には鼻カニューラ3.0L/min にてSpO2 96%を持続できたためNHF から鼻カニューラへ変更となった.第12 病日には鼻カニューラ2.0L/min にて側臥位でもSpO2 96%と体位による酸素化の変化がほとんどみられなくなった.その後は、段階的な理学療法を実施し,第20 病日に転院となった.
【結果】
COVID-19 肺炎,急性呼吸不全患者が良好な酸素化を維持でき肺障害が改善し,気管内挿管を回避できた.また,新たな肺炎や無気肺,せん妄,褥瘡などの予後に有害と思われる合併症も認めなかった.
【考察】
今回,NHF 管理下での体位呼吸療法の即時効果と長期効果が得られたのは、非鎮静下での体位呼吸療法のため,患者にとって非常に苦痛を伴う管理となってしまうが,完全側臥位,前傾側臥位,そして前傾位での座位と患者への負担を考慮した体位呼吸療法を継続できた要因と考える.また,NHF 管理下での適切な体位呼吸療法を継続できれば,気管内挿管の回避も可能と考えられる.
【倫理的配慮,説明と同意】
患者に対しヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を得た.また,患者の個⼈情報を匿名加⼯することに よって,患者が特定されないよう配慮を行った.