主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 93
【はじめに】
当院では、重症のCOVID-19 肺炎患者の入院数は第3 波より第4 波で増加傾向にあり、挿管人工呼吸器管理を要する患者へのリハビリテーション(以下リハ)介入の機会は増加した。酸素化の改善が乏しい重症COVID-19 肺炎症例に対する体位呼吸療法は治療手段の1 つとして挙げられ、特に腹臥位療法を推奨する報告は多く、当院でも重症例に対し実践してきた。今回当院でのCOVID-19 患者に対する体位呼吸療法の取り組みとその効果について報告する。
【方法】
2021 年4 月~ 5 月にCOVID-19 陽性で入院し、挿管人工呼吸管理が必要となった患者5 例を対象とした。調査項目は、年齢、性別、PaO2/FiO2(PF 比)、血液検査データ(LDH,CRP,WBC,DD,Plt)、挿管期間、合併症の有無(人工呼吸関連肺炎:VAP, 褥瘡, 事故抜管, せん妄, 血栓症, 関節機能障害)とし、各項目について、体位呼吸療法開始日と抜管日の2 点で比較した。
【体位呼吸療法の取り組み】
当院では重症COVID-19 肺炎患者は集中治療病棟ではなく一般病棟で対応している。安全で円滑な呼吸療法を行うためには病棟看護師(Ns)の協力は不可欠であるが、その多くは各病棟から招集された呼吸療法について経験が少ない者が多かった。そのため、初期はPT3 名で介入し、Ns は補助的に実施した。事前にPTの訪棟スケジュールを病棟Ns へ周知することで、事前準備や人員確保の依頼を円滑にし、体位呼吸療法は、腹臥位と同等の効果が得られる前傾側臥位を選択した。適切な感染対策を講じたうえで、PT3 名とNs2 名で、回路やルート類の管理、体位変換を動画撮影して一律の方法で実施した。実施時間は、16 時から9 時の計17 時間の前傾側臥位を実施、夜間はNs にて適宜除圧を実施。翌朝9 時に仰臥位とし16 時までの間に理学療法、Ns ケア、褥瘡の確認、効果判定、その他検査がおこなわれた。
【結果】
年齢:73 ± 4.1、性別:男2 女3、体位呼吸療法開始日(前)/ 抜管日(後)として、P/F は145.6 ± 21.4/202.8 ± 71.2、DD は12.7 ± 14.2/3.1 ± 3.0、LDH は427 ± 109.8/283.2 ± 30.7、CRP は8.9 ± 9.3/3.2 ± 3.6、WBC は8.9± 1.7/9.7 ± 2.2、Plt は171 ± 44.2/209.8 ± 74.2、挿管期間は12.4 ± 5.5日、合併症は、VAP 0例、褥瘡1 例、事故抜管0 例、せん妄3 例、血栓症1 例、関節障害0 例であった。
【考察】
医療スタッフに適した個人防護具(PPE)の着用を管理し、かつ一般病棟において呼吸療法の経験が少ないスタッフで挿管人工呼吸管理中の患者の体位呼吸療法をおこなうには十分なトレーニングが必要である。今回は、経験豊富な理学療法士が3 名と人員確保に重点を置き、医師やNs と連携し、スケジュールを立てて実行したことが、事故抜管や抜管後の関節障害といった問題を回避するなど患者の良好な管理を可能とし、かつ医療スタッフの感染も生じさせていない要因と思われる。凝固系異常においては本疾患の特徴的病態であり対象者においてもDD は高値を示し1 例の血栓症発症も認めている。体位呼吸療法との因果関係は不明であるが、凝固系異常の推移は今後も体位呼吸療法の可否における重要な指標であると思われる。抜管後せん妄発症は3 例と予防効果としては課題を残す結果となっている。前傾側臥位を実施する際には、事故抜管などを予防するために深めの鎮静を要する。RASS(Richmond agitation-sedationscale)を用いた適切な鎮静薬の調整とせん妄評価は今後の課題であると思われる。
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に基づき内容・意義を本人・家族へ説明し口頭にて同意を得て実施をした。また、患者の個人情報が特定できないように十分に配慮した。