主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 94
【はじめに】
COVID-19 重症例は感染者数の約9%に相当し、呼吸管理による長期臥床の影響から身体機能の低下が生じることは容易に想定できる。今回、膀胱癌再発に対し化学療法目的に入院中、COVID-19 を発症され、重症化した症例に対しリハビリテーションを行う機会を得たので報告する。
【症例紹介】
症例は70 代男性。膀胱癌に対し膀胱全摘、回腸導管造設術を施行されたが、術後7 か月のCT 検査にて右腸骨領域を中心に複数のリンパ節転移の再発を認め、化学療法目的に入院となった。既往歴は高血圧、肺気腫があった。入院前ADL は自立、妻と2 人暮らしであった。
【経過】
化学療法(GC 療法)9 日目、COVID - 19 発症となる。徐々に呼吸状態悪化し、発症10 日目に酸素化不良のため人工呼吸器管理となった。全身管理目的に他院転院となり発症21 日目に抜管、発症25 日目にリハビリ目的に当院転院となった。初回評価時( 発症29 日目)、安静度はベッド上安静であった。昇圧剤投与下にて収縮期血圧80mmHg 台を推移し、安静時SpO2 は98%であった。右下肢はリンパ節転移の影響から著明な浮腫を認めた。疼痛は右腰部にNRS2 であり、筋力はGMT( 右/ 左) にて3/4 と右下肢に筋力低下を認めた。ADL はFIM65点( 運動30 点、認知35 点)、Performance Status Scale( 以下PS)4 であった。また、患者の希望は1) 家に帰りたい、2) 孫に会いたい、3) 職場に最後のあいさつに行きたいであった。発症44 日目、収縮期血圧120mmHg 台まで改善した。昇圧剤投与終了し離床開始となった。初回歩行時は歩行器にて30 m歩行可能であったが、軽介助を要し、運動時SpO2 は86%まで低下した。以降、血圧やSpO2 の変動に注意し、運動療法を継続した。発症56 日目、NRS4 と腰部痛の増悪を認めたが、歩行器にて80m を移動可能となった。近位監視にて可能であり、運動時SpO2 は95%を維持していた。発症57 日目のCT 検査にて右外腸骨領域のリンパ節転移は増大を認めた。入院後、自宅に帰宅できていないことから、一旦、自宅退院を希望されたため、自宅にて歩行器の使用は困難とのことから松葉杖での歩行練習及びADL 練習を開始した。発症65 日目、歩行は両松葉杖にて80m 移動可能となり、運動時SpO2 は98%であった。筋力はMMT( 右/ 左) にて股関節3/4、膝関節4/4、足関節3/4 であり、右下肢の筋力に変化はみられなかったが、移動機能の向上に伴いADL はFIM103 点( 運動68 点、認知35 点)、PS2 までの改善を認め、発症66 日目、一時的に自宅退院となり患者の希望も達成できた。退院6 日目、化学療法目的に再入院となった。リハビリは継続して行い、再入院18 日目、化学療法は外来にて継続することとなった。自宅退院時は、介護保険を申請し、ピックアップ型歩行器を使用することとなった。
【考察】
新規感染症であるCOVID-19 に対する先行研究は少ない。今回、感染対策のためリハビリの時間や場所も制限され、廃用症候群の進行や原疾患の治療を継続できない中、重症例に対し運動療法を行ったことでADL を改善することが出来た。その結果、原疾患の治療を再開でき、自宅退院可能となり患者の希望を達成できた。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、患者には今回の発表に関する主旨と個人情報保護について口頭と書面にて十分に説明し、同意を得た。また、開示すべき利益相反はない。