九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2021
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車椅子座位姿勢の検討を重ね、褥瘡悪化予防と離床が図れた一症例
*筒井 文也
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p. 95

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抄録

【はじめに】

今回、長期臥床と食事摂取量低下を要因として高度な仙骨部褥瘡を生じ入院した患者を担当した。介入当初、覚醒状態や食事姿勢の問題により食事摂取が進んでいないと考え車椅子座位での食事を検討した。その際携帯型接触圧力測定器 パームQ®( 以下、パームQ) を用いてシーティングを検討し褥瘡悪化予防と座位保持時間延長が図れた為、経過を踏まえここに報告する。

【症例紹介】

60 歳代女性。診断名は仙骨部褥瘡、右踵部褥瘡、合併症は統合失調症、既往歴は左乳がん、病前ADL は全介助、身長146.0cm、体重33.4kg、BMI 15.7、In Body のSMI は6.6 kg/m² であった。

【初期評価】

JCS はII -20、コミュニケーションはその場でのやり取り可能だが妄想や妄言がみられた。仙骨部は改定DESIGN-R® による分類でDepth( 以下、D) が4、潰瘍部の開口部が60 × 60mm、壊死組織が増生した局面かつポケットを形成し12 時・3 時・6 時・9 時方向にそれぞれ30mm・40mm・20mm・15mm、骨膜近傍まで深達しており疼痛の訴えがあった。両側足関節背屈制限 -20°で尖足を呈し、脊柱はやや後弯していたが側彎は認めず、脊椎の棘突起や肩甲骨の骨突出がみられた。MMT は上肢3、両下肢2、体幹2、握力は測定困難だが離握手可能であった。自力での体位変換は困難であり、FIM は30/126 点( 運動項目18/91 点、認知項目12/35 点)、Hoffer 座位能力分類(JSSC 版) で座位能力3、離床への意欲はみられなかった。食事は全介助の下行われ、嚥下機能は正常であったが先口期の問題により摂取量は数口~ 1/5 程度に留まることが多かった。

【経過】

マットレスはエアドクター® を使用していた。皮膚・排泄ケア認定看護師と連携しパームQ を用いて車椅子座位姿勢の検討を行なった。車椅子の座面では坐骨部・仙骨部にかかる圧力が41.9 mmHg・28.9 mmHg であり、坐骨部は臨床上の目安とされる40 mmHg よりも高かった。そこでアウルREHA 3Dジャスト® を座面に敷き再測定を行ったところ33.1 mmHg・28.2 mmHg と体圧分散がみられた。またバックサポートにもクッションを挿入し脊柱や肩甲帯の褥瘡予防を図った。5 分の車椅子座位保持から開始したが姿勢の崩れや疼痛の訴え、全身倦怠感はなく約20 分実施できたことから昼食時に車椅子移乗し食事摂取することとした。病棟看護師へ車椅子移乗方法や座位姿勢を申し送りし、かつシーティング方法をベッドサイドに掲示した。徐々に病棟看護師へ移行し離床の定着を図った。

【結果】

JCS はI -3 へ改善し仙骨部はD4、潰瘍部の開口部は50 × 40mm、ポケットは11 ~ 3 時方向に20 ~ 30mm の深さとなった。褥瘡部は治癒過程において新しい赤色の肉芽組織が盛り上がってきている赤色期の状態となった。FIM は32/126 点( 運動項目:20/91 点、認知項目 12/35 点、食事と整容で1 点ずつの改善)、Hoffer 座位能力分類(JSSC 版) で座位能力2、自力で座位を保つ意欲も見られた。食事は自力摂取となり摂取量は2/3 ~全量摂取していることが多かった。車椅子座位保持時間はリハビリと昼食時の合計1 時間程度可能となり、姿勢の崩れはみられなかった。

【考察】

今回、シーティングを実施したことで褥瘡悪化予防と並行して車椅子座位時間を確保し離床を図ることができた。また車椅子座位での食事により摂取量の増加がみられたことも褥瘡悪化予防の一助になったと考えられる。この症例を通して学んだことを今後の臨床に生かしていきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本症例報告は佐世保中央病院倫理委員会の承認を得ている。( 承認番号2021-07)

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© 2021 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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