主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 96
【目的】
国立がん研究センターによる2019 年のがん統計予想では,男女の全がん罹患数は100 万人を超え,部位別で大腸がん罹患数は約15%を占めている.近年,周術期消化器がん手術後の身体機能の変化に関する報告はいくつかみられるようになった.当院は大腸肛門病の専門病院であり,周術期大腸がん患者に対して運動療法を行っている.そこで,今回周術期大腸がん患者を高齢者,若年者に分け,手術前後での身体機能および体組成の変化率を比較したので報告する.
【方法】
2019 年5 月から2020 年3 月までに,当院で初回大腸がん根治術を施行し,認知症の既往および手術前後に浮腫がなく,手術前後の理学療法評価を行えた81 例を対象とした.対象者を65 歳以上のA 群48 例(男性26 名,女性22 名,平均年齢74 ± 5.8 歳),65 歳未満のB 群33 例(男性20 名,女性13 名,平均年齢51.9 ± 9.7 歳)に分けた。電子カルテより後方視的に年齢,手術部位,手術術式,がん進行度,握力,30-seconds chair-stand test(CS-30),片脚立位時間,下腿周径,6 分間歩行距離(6MWD),細胞外水分比,骨格筋量,骨格筋指数(SMI)を収集し,手術前後を比較した.なお,理学療法および体組成の評価は手術前,手術後1 週間目に実施した.また,手術部位内訳(A 群/B 群)は盲腸(2 例/ 0 例),上行結腸(7 例/ 1 例),横行結腸(7 例/ 3 例),下行結腸(2 例/ 2 例),S 状結腸(6 例/ 5 例),直腸(22 例/ 22 例),肛門管(2 例/ 0 例)であった.手術術式内訳(腹腔鏡下手術/開腹手術)は(A群:48 例/ 0 例),(B 群:32 例/ 1 例)であった.がん進行度内訳(A 群/B 群)はI(31%/ 24%),II(19%/ 9%),III(36%/ 52%),IV(14%/ 15%)であった.統計学的処理は,Mann-Whitney U 検定およびχ 2 検定を用いて比較し,有意水準はすべて5%未満とした.
【結果】
A 群,B 群の手術前後の身体機能および体組成変化率に統計学的な有意差は認めなかった.各項目における手術前後の変化率内訳(A 群/ B 群)は握力(100.0%/ 97.3%),CS-30(98.4%/ 106.6%),片脚立位時間(99.4%/100.3%),下腿周径(97.2%/ 97.5%),6MWD(102.0%/ 95.2%),骨格筋量(99.0%/ 98.9%),SMI(97.9%/ 98.4%)であった.また,がん進行度も統計学的な有意差は認めなかった.
【考察】
Jensen らは,消化器外科手術後に膝伸展筋力,筋肉量,6 分間歩行距離が低下すると報告している.また,出村らによると筋力は20 歳代をピークに低下傾向にあり,60 歳以降にその低下傾向が顕著になるといった報告があるが,今回の研究においてA 群,B 群の身体機能および体組成変化率に統計学的な有意差は認めなかった.齋藤らは,レジスタンス運動を長期的に継続することで高齢者においても有意な筋量の増加は可能であることや,矢部らは手術後早期の歩行訓練の開始によって,身体機能低下を予防する一助になりえると報告している.当院では,周術期大腸がん患者に対し,手術前からセラピストが介入し,レジスタンス運動や呼吸訓練,歩行訓練を行っている.手術後は1 日目から離床に努め,早期から歩行訓練を開始し,基本動作能力の自立を図っている.今回の結果から,周術期大腸がん患者に対する手術前,手術後の運動療法は年齢およびがん進行度に関係なく,最適な負荷で運動療法を行うことが重要であり,当院での取り組みは妥当であったと考えられる.今回は,性別や運動習慣,在院日数などを考慮していないため,今後再検討し臨床へ還元していきたいと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院の倫理審査会の承認(第20-05 番)を得て実施された.