主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2021 from SASEBO,長崎
回次: 1
開催地: 長崎
開催日: 2021/10/16 - 2021/10/17
p. 97
【はじめに】
高齢の大腿骨近位部骨折(以下:近位部骨折)術後患者は、退院時の歩行能力が受傷前に比べ低下しやすい。また、移動手段の選定では、歩行車歩行から杖歩行への移行は、歩行難易度が上がる為、判断に悩まされる事が多い。今回は動的バランスの評価スケールであるMini-Balance Evaluation System Test(以下:Mini-BESTest)が、当院回復期リハビリテーション病棟(以下:回リハ病棟)に入棟した近位部骨折術後患者の杖歩行自立または杖なし歩行自立の判定基準になりうるか検証した。
【対象と方法】
対象は、2018 年11 月20 日~ 2020 年11 月20 日までに当院回リハ病棟に入棟した近位部骨折術後患者の内、受傷前移動手段が杖歩行自立または杖なし歩行自立であった者から、本検査の理解や実施が困難な者を除き、同意の得られた17 名とした。病棟内移動手段が杖歩行または杖なし歩行自立に至った者を杖歩行獲得群(以下:獲得群)11 名(男性2 名、女性9 名、平均年齢76.5 ± 6.6 歳)、その他の歩行補助具での歩行自立にとどまった者を杖歩行非獲得群(以下:非獲得群)6 名(男性0 名、女性6 名、平均年齢82.3 ± 6.3 歳)に分類した。Mini-BESTest の測定は、病棟内移動が自立した日から1 週間以内に実施した。合計点、および各セクション(予測姿勢調整、姿勢反応、感覚統合、歩行安定性)の2 群間の比較をMann‐Whitney’ s U test を用いた。有意水準は5% とした。またROC 曲線で分析を行い、カットオフ値、AUC、感度、特異度を算出した。
【結果】
Mini-BESTest 合計点の平均点は獲得群17.7 ± 5.4 点、非獲得群12.7 ± 2.5 点となり、獲得群が有意に高かった。各セクション別平均点はそれぞれ1)予測姿勢調整(獲得群:4.8 ± 0.8 点、非獲得群:4.0± 1.0 点)、2)姿勢反応(獲得群:2.3 ± 2.3 点、非獲得群:1.7 ± 2.1点)、3)感覚統合(獲得群:5.4 ± 0.9 点、非獲得群:4.8 ± 0.7 点)、4)歩行安定性(獲得群:5.3 ± 2.7 点、非獲得群:2.2 ± 0.4 点)であった。各セクションの両群間の比較では、歩行安定性の項目で獲得群が有意に高く、その他のセクションの有意差は認められなかった。Mini-BESTest 合計のカットオフ値は14 点、AUC0.803、感度0.727、特異度0.833 であった。
【考察】
杖歩行または杖なし歩行獲得には歩行安定性のセクションの関与が大きいことが示唆された。特に歩行安定性のセクションの中には跨ぎ動作とピポットターンがあり、狭い支持基底面内での動作が要求される為、獲得群で有意に高くなったと考えられる。当院回リハ病棟に入棟した近位部骨折術後患者の杖歩行自立または杖なし歩行自立のMini-BESTest 合計点のカットオフ値は14 点、AUC0.803、感度0.727、特異度0.833 と高値を示しており、杖歩行自立判定に有用であることが示唆された。本研究の課題は対象人数が少ないことである。今後、対象人数を増やして再度検討を行い、当院の杖歩行自立判定基準にしたい。
【倫理的配慮,説明と同意】
「本研究の計画立案に際し、事前に所属施設の臨床研究審査委員会の承認を得た。 また研究の実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。」