主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2022 in 福岡
回次: 1
開催地: 福岡
開催日: 2022/11/26 - 2022/11/27
【はじめに】
鏡視下腱板修復術( 以下,ARCR) に関して近年では客観的尺度のみではなく主観的尺度を用いた報告が散見される.その中でも患者満足度や不安感の評価は特に重要と考えられている.
【目的】
ARCR 後の患者満足度には,肩関節の機能的な要因のみではなく心理的な要因も関係すると報告されているが,術後3 ヶ月については不明瞭である.術後3 ヶ月時の患者満足度に関係する因子を知ることは,治療介入の幅を広げることになると考えた.したがって本研究は,ARCR 後3 ヶ月の患者満足度に関連する因子を機能および心理的因子の観点から明らかにすることを目的とした.
【方法】
研究デザインはARCR を施行し術後3 ヶ月で評価が可能であった17 名( 平均年齢65 ± 10.5 歳,男性12 名,女性5 名) を対象とした.除外項目は,肩関節に既往がある者とした.患者満足度の評価にはNet Promoter Score(以下,NPS)を使用した.患者満足度に関連する機能的因子として安静・夜間・運動時の疼痛Numerical Rating Scale(以下,NRS),肩関節屈曲・外転・外旋可動域( 以下,ROM),Hand Held Dynamometer を用いて屈曲・外旋・内旋筋力を測定し,Shoulder36(以下,Sh36)疼痛・可動域・筋力を評価した.心理的因子としてPain Self-Efficacy Questionnaire(以下,PSEQ),Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale(以下,HADS)を用いて評価した.統計学的分析は,NPS と機能および心理的因子との相関関係をSpearman の順位相関係数を用いて検討した.統計ソフトはR2.8.1 を用い,有意水準を5%とした.
【結果】
ARCR 後3 ヶ月の患者満足度とPCS 反芻( ρ=-0.33,p=0.034),PCS 無力感( ρ=-0.49,p=0.008),PCS 拡大視( ρ=-0.47,p=0.029) が負の相関を認めた.その他の項目として安静時痛( ρ=-0.33,p=0.29), 夜間時痛( ρ=-0.14,p=0.638), 運動時痛( ρ=-0.5,p=0.052), 屈曲ROM( ρ=-0.03,p=0.807), 外転ROM( ρ=0.09,p=0.753), 外旋ROM( ρ=-0.29,p=0.367),屈曲筋力( ρ=0.05,p=0.915), 外旋筋力( ρ=0.16,p=0.989), 内旋筋力( ρ=-0.1,p=0.27),Sh36 疼痛( ρ=0.33,p=0.484), Sh36 可動域( ρ=0.42,p=0.155) ,Sh36 筋力( ρ=0.28,p=0.402),PSEQ( ρ=0.32,p=0.139),HADS 不安( ρ=0.2,p=0.524),HADS うつ( ρ=0.04,p=0.786) との間に有意な相関は認めなかった.
【考察】
ARCR 後3 ヶ月における患者満足度が大きいことは,PCS 反芻・無力感・拡大視が小さい結果となった.そのため,臨床介入としてARCR 後3 ヶ月は疼痛に対する管理方法など患者教育を行うことが重要であり,また患者満足度向上に繋がると考える.
【結論】
ARCR 後3 ヶ月の患者満足度に機能的な影響はなく,疼痛に対する破局的思考の影響が強かった.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施にあたり対象者には研究の趣旨を説明し同意を得た.また当院の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:FRH2022-R-002).