九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: O-38
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口述7
外側半月板縫合術後3 ヵ月における身体機能の特徴
緒方 悠太佐藤 孝二木内 正太郎田渕 幸祐
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抄録

【はじめに、目的】

膝半月板損傷に対する縫合術は半月板の力学的機能が温存されることから、近年積極的に取り組まれている。しかしながら、高いものでは20% を超える再断裂率も報告されており、術後の大きな課題の一つとなっている。この一因として、標準的な身体機能の経過が明らかになっておらず、ある時点での身体機能の獲得が正常かどうか判断出来ないため、不十分な身体機能のまま競技復帰している症例がいることが考えられる。そこで、本研究ではスポーツ動作開始時期である膝外側半月板縫合術後3 ヵ月時点での身体機能の特徴を調査し、スポーツ動作開始基準の一助となる知見を提供することを目的として実施した。

【方法】

膝外側半月板単独損傷に対して縫合術を施行した術後3 ヵ月の患者13名(平均身長164 ± 8 cm、平均体重64 ± 21 kg、平均年齢28 ± 15 歳)を対象とした。Cybex を用いた60°/sec での等速性膝関節伸展および屈曲筋力を計測した。日本整形外科学会の基準に基づき膝関節屈曲可動域( 膝屈曲ROM) をゴニオメーターで、伏臥位での踵の高さの違い(Heel Height Difference; HHD)を膝関節伸展制限の指標として測定した。また、疼痛の指標としてKnee Injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS) の疼痛サブスコアを評価した。患健差の検定はWilcoxon singed rank test にて行い、有意水準は5% 未満とした。

【結果】

膝伸展筋力は患側0.97 ± 0.4 Nm/BW、健側1.20 ± 0.3 Nm/BW で健側と比較して患側が有意に低値を示した(p<0.05) が、膝屈曲筋力は患側0.61± 0.3 Nm/BW、健側0.63 ± 0.2 Nm/BW で有意な患健差を認めなかった(p=0.36)。膝屈曲ROM は患側144 ± 9 度、健側151 ± 7 度で健側と比較して患側が有意に低値を示した(p<0.05)。HHD は1.9 ± 4cm であり、13例中7 例の伸展ROM 制限が残存していた。KOOS 疼痛サブスコアは82 ±17 点であった。

【結論】

膝外側半月板縫合術後3 ヵ月において膝伸展筋力は患健差が残存し、可動域制限も軽度残存していた。膝伸展筋力の患健比は約80% であり、膝伸展筋力が膝屈曲筋力よりも回復が遅れる傾向にあることが分かった。また、膝屈曲ROM 制限は術後2ヵ月間屈曲120 度までの制限があるため四頭筋の柔軟性が低下していたこと、膝伸展ROM 制限は手術侵襲のある膝蓋下脂肪体の硬さの残存や、膝後方の軟部組織の柔軟性の改善が不十分であったことが可能性として考えられる。早すぎる身体機能の獲得は組織の成熟を妨げ再断裂のリスクとなる可能性があるが、遅れるとスポーツ復帰の遅れや異常動作の残存に繋がる。今後は予後と身体機能の経時的変化を照らし合わせながら、身体機能の適切な獲得時期を明らかにしていく必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に則り実施しており、事前に対象および必要に応じて保護者に同意を得ている。また、久留米大学倫理委員会(研究番号:17075)の承認を得て実施している。

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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