九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題2[ 成人中枢神経② ]
脳卒中後片麻痺患者における体幹運動の縦断的変化と歩行パラメータとの関連性
O-011 成人中枢神経②
戸髙 良祐狩生 直哉梶山 哲阿南 雅也
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キーワード: 脳卒中, 体幹, 歩行
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p. 11-

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抄録

【はじめに】 脳卒中後片麻痺患者の歩行において、体幹運動は歩行速度や下肢運動機能と関連することが報告されている。そのため、歩行評価は体幹運動も含めて行う必要がある。特に、発症から6ヶ月以内のような運動機能が回復しやすい時期において、体幹運動の縦断的変化や、歩行速度などのパラメータとの関係を検証することはリハビリテーションプログラムを立案する上で重要である。しかしながら、これまでの報告では体幹運動を含めた縦断的変化に関する報告は少ない。

 そこで、本研究の目的は回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中後片麻痺患者を対象に、体幹運動の縦断的変化を検証するとともに、歩行速度およびTrailing limb angle(TLA)との関連を明らかにすることとした。

【方法】 対象は回復期リハビリテーション病棟に入院中の初発脳卒中後片麻痺患者16人とした。課題動作は直線歩行路上の快適歩行とした。その際、麻痺側大転子および第5中足骨頭にマーカを貼付し、第3腰椎に加速度計を取り付けた。また、麻痺側より矢状面像のビデオ撮影を行った。ビデオ映像と加速度信号から、歩行速度、麻痺側下肢のTLA、体幹動揺性の指標であるRoot mean square(RMS)、体幹規則性の指標であるAuto correlation(AC)を定量化した。RMSおよびACは左右(x)・鉛直(y)・前後(z)にて算出し、RMSは歩行速度の2乗値で除して正規化した。計測のタイミングは、担当理学療法士が見守り歩行獲得(Functional ambulation categories:3)を確認した時点より(T0)、1ヶ月後(T1)、2ヶ月後(T2)の計3時点とした。

 統計解析は、各指標の縦断的変化を一元配置分散分析反復測定法またはFriedman検定にて検証した。多重比較はBonferroni法を使用した。また、各時点の歩行速度およびTLAと体幹運動の相関関係を、Pearsonの積立相関係数またはSpearmanの順位相関係数にて検証した。有意水準は5%とした。

【結果】 有意な群間差を認めた項目は、歩行速度(p<0.01, η2=0.24)、RMSの全成分(p<0.01, r=0.49~0.55)、ACy(p<0.01, η2=0.25)であった。歩行速度とACyはT0と比較してT1およびT2で有意に向上した(p<0.01)。RMSの全成分はT0と比較してT1およびT2で有意に低下した(p<0.05)。また、歩行速度は全期間でTLA(p<0.01, r=0.59~0.79)およびACy(p<0.01, r=0.56~0.72)と有意な正の相関を示し、RMSの全成分と有意な負の相関を示した(p<0.05, r=-0.54~-0.9)。TLAはT0でRMSの全成分(p<0.05, r=-0.65~-0.72)、T1でRMSxおよびRMSy(p<0.05, r=-0.75~-0.86)、T2でRMSx(p<0.05, r=-0.53)と有意な負の相関を示した。

【考察】 脳卒中後片麻痺患者の歩行は、前後および左右への体幹運動増加や非対称性が生じやすい。そのため、見守り歩行獲得時にRMSが高く、ACが低い状態は、歩行時の体幹運動が不安定であり、バランスが十分に保たれていなかったことを示唆している。T0からT1にかけて体幹運動が安定した結果、RMSの低下やACyが向上したものと考える。

 また、体幹運動の不安定性は、歩行速度やTLAの減少と関連することが報告されている。したがって、体幹運動の安定性向上は、歩行パラメータの改善に寄与することが示唆された。

 以上より、RMSおよびACyは歩行状態の変化を反映し、歩行速度やTLAといった指標と関連することから、歩行機能の改善の指標になりうる可能性がある。

【倫理的配慮】 本研究は、当院の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:22)。また、ヘルシンキ宣言を遵守したうえで事前に対象者へ十分な説明を行い、同意を得た。

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