主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2023 in 熊本
回次: 1
開催地: 熊本
開催日: 2023/11/25 - 2023/11/26
p. 136-
【目的】 右人工股関節置換術後すぐに転倒して創部が離開したため再縫合を行い、7カ月経過後にウォーカー歩行を獲得した症例を担当したので報告する。
【症例紹介】 年齢:80歳代、性別:女性、診断名:右人工股関節置換術後(前側方進入)、脚長差:右-1.5 ㎝、右足部背屈麻痺:あり、家屋状況:1戸建て住宅、独居(1本杖)、現病歴:X年2月X日にA病院にて右人工股関節置換術を施行。術後6日目に転倒し創部離開。創部処置するもなかなか上皮化せずに術後36日目に手術室で洗浄デブリを行い再縫合となる。術後92日目にリハビリ目的にて療養型の当院へ転院。A病院術後プログラム:術後1週過ぎて部分荷重は痛くない程度で杖もしくは歩行器歩行を開始。3週から4週の時点で痛みなければ1本杖歩行。術後3ヶ月間は杖歩行を行い、術後6カ月で杖を外すことを目標とする。
【評価】 (入院時⇒退院時)FIM:85点⇒102点、ROM-T:(右)股関節屈曲100°⇒100°、伸展-5°⇒0°、外転5°⇒10°、内転10°⇒10°、足関節背屈(膝屈曲位)0°⇒10°、(膝伸展位)10°⇒0°、大腿周径:膝蓋骨直上10 ㎝(右)32.0 ㎝⇒33.6 ㎝、15 ㎝(右)34.6 ㎝⇒37.8 ㎝、MMT:(右)股関節屈曲3⇒4、伸展4⇒4、外転3-⇒3、内転4-⇒4、膝関節屈曲4⇒4+、伸展4⇒4+、足関節背屈3-⇒3+、底屈4-⇒4、(入院時のみ)HDS-R:27点、MMSE:28点、MOCA-J:22点(退院時のみ)開眼片脚立位時間:右1.04秒、左5.56秒、(1本杖使用:右47.63秒)、身長147.0 ㎝、2step:110 ㎝、TUG:14.22秒(1本杖)、16.37秒(ウォーカー)、SPPB:9点。
【介入及び経過】 (入院時:術後93日目、入院2日目)車椅子駆動軽介助、U字歩行器歩行見守り(右足部下垂、躓きが見られる)、右足部背屈麻痺、車椅子のブレーキのかけ忘れ等の不注意が時々見られた。問題点:①右足部の可動域制限、筋力低下、②注意力の低下、③右足部の躓き、④移動能力低下、⑤日常生活能力低下。
プログラム:①徒手療法、②関節可動域運動、③筋力増強運動、④手すり把持での横歩き、⑤車椅子駆動、⑥歩行器歩行、⑦トイレ練習。
(退院時:術後224日目、入院133日目)車椅子駆動見守り、抵抗器付きウォーカー歩行自立、1本杖歩行見守り、歩行時の躓きは見られない、1本杖歩行見守りにてスラローム、方向転換、横歩き、10 ㎝段差昇降等の応用歩行可能、手すり使用にて20 ㎝の段差昇降可能。
プログラム:①徒手療法、②関節可動域運動、③筋力増強運動、④1本杖ステップ、⑤20 ㎝台ステップ、⑥1本杖歩行、応用歩行、⑦ウォーカー歩行。
【考察】 本症例は術後7カ月を経過して右足部の躓きもなくなり抵抗器付きウォーカー歩行自立、1本杖歩行見守りとなりサービス付き高齢者住宅へ退院となった。開眼片脚立位時間、TUG、SPPBの項目は結果を基準値と比較し転倒リスクがあると判断した。2step値は0.75でありロコモ度3で社会参加に支障をきたしている状態に該当する。認知機能面ではMOCA-Jのみが軽度認知症に該当するため、運動機能面と総合すると転倒リスクがあると判断し1本杖歩行は見守りレベルと考える。1本杖歩行の能力は右足部の躓きが見られず10 ㎝の段差を昇降できスラロームなどの応用歩行も行えるが、転倒リスクを考慮して自立した移動手段はウォーカー歩行を選択した。転倒により積極的な理学療法が行えず歩行の獲得が遅れたが、継続した理学療法を行うことで歩行獲得に至った。
【倫理的配慮、説明と同意】 当法人の倫理委員会の承認を得てから実施している(承認番号:KR162)。