九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題24[ 骨関節・脊髄④ ]
人工股関節全置換術前方侵入法患者の術後早期歩行獲得に影響を及ぼす要因の検討
O-138 骨関節・脊髄④
橘 和希
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 138-

詳細
抄録

【はじめに、目的】 変形性股関節症(Osteoarthritis of the Hip:股OA)に対する人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty:以下、THA)での前方侵入法(Direct anterior approach:以下、DAA)は、術後侵襲や術中出血量が他のアプローチ法と比べ少なく患者負担が軽いとされているため、術後早期からの積極的なリハビリテーションが可能となり、早期歩行獲得が可能と言われている。しかし、歩行に必要な運動機能を獲得するのに時間を要する症例も経験する。そこで今回当院におけるDAA術後の早期歩行獲得に影響を及ぼす要因について調査した。

【方法】 本研究は診療録を後方視的に調査して行った。対象は当院において2020年1月~2022年12月にTHA(DAA)を施行された者のうち、関節リウマチや術後麻痺を呈した症例を除いた31名(男性5名、女性26名、年齢69歳±9.3歳)とした。調査項目は年齢、性別、BMI、手術時間、術中出血量、入院前、退院時の術側股関節可動域(以下、ROM)、日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(以下、JHEQ)、日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下、JOAスコア)とした。術後2日以内に病棟内歩行器自立が可能な群(以下、早期歩行獲得群)、3日以降に病棟内歩行器自立を獲得した群(以下、歩行獲得遅延群)に分類し、群間で調査項目について統計学的に比較し分析した。統計はStudentのt検定、Mann-WhitneyのU検定を用い、有意水準は5%未満とした。

【倫理的配慮】 本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】 術前JHEQ(痛みの項目)、術前伸展ROMにおいて有意差を認めた。年齢、性別、BMI、手術時間、術中出血量、JOAスコアにおいてはいずれも有意差を認めなかった。

【まとめ】 本研究の結果から、早期歩行獲得には術前の疼痛、術前伸展ROMが影響することが示された。DAAは縫工筋と大腿筋膜張筋の筋間を切開し手術を展開するため、術前から股関節伸展可動域制限のある患者は術前股関節伸展制限が無い患者に比べ術後早期の軟部組織伸張性が低下することが考えられ、早期歩行獲得を阻害する要因になるのではと考える。また、THA術後の早期離床には術中出血量が影響すると言われているが、今回の研究では2群間の術中出血量は当院DAAでの術後早期歩行獲得に影響を及ぼす要因とはならないという結果となった。以上のことから、術後の疼痛コントロールや、股関節伸展角度獲得に着目しアプローチを行っていきたい。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top