九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O7-4
会議情報

セッションロ述7 スポーツ・健康1
理学療法士の学校保健分野への第一歩
畑村 霞江村 一帆登立 一駿松村 うつき畑地 耕次尾上 祐大高岡 沙知
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】 運動器の障害のために移動機能が低下した状態を「ロコモティブシンドローム (以下、ロコモ)」という。進行すると将来要介護状態になるリスクが高く、主に高齢者で注意が必要といわれる。文部科学省の調査によると、近年子どもの運動機能低下、姿勢の悪化、肥満傾向の子どもの割合が多いことが懸念されている。スマホ・ゲームの普及、外遊びの減少により、柔軟性の低下、バランス不良など子どもの運動器機能が低下している状態を「子どものロコモティブシンドローム (以下、子どもロコ モ)」という。片足立ちでふらつく、しゃがみ込めない、体の前屈で床に手がつかない子どもが急増しており、文部科学省は子どもの運動機能低下を危惧し、平成28年より全国の学校健診に運動器検診を導入している。このことを踏まえ当院では小児科医・整形外科医と共同で子どもロコモの予防を目的とした体操指導の活動を行っており、ここに報告する。 【活動目的】 当院の小児科医は学校医を委託されている。子どもたちの健康課題のために家庭・学校・医療機関が連携し、令和3年度より町内における小中学校の希望校を対象に、小児科医指示のもと①学校健診時に理学療法士 (以下、PT)が同行し子どもロコモチェック、②体操指導を目的に関与した。また活動を継続していく過程の中で今後の子どもたちの健康増進の土台作り、家庭・学校・医療機関との連携の構築を目的とした。 【活動内容】 活動の主体は当院小児科医・整形外科医・PTで、介入対象は事前アンケートで指導希望の回答が得られた学校の児童・生徒とその保護者である。町の教育委員会・養護教諭を中心とした学校教諭に活動の協力を依頼した。活動に先駆け、小児科医とPTが共同で体操指導のマニュアルを作成した。内容は、①保護者による運動器健診事前チェックリスト、②教諭による運動器健診チェックリスト、③体操の詳細、参考文献である。子どもロコモチェックは5項目で (1)片足立ち、 (2)しゃがみ込み、 (3)肩挙上、 (4)体の前屈、 (5)グーパー動作である。学校健診とは別に体操指導の対象は、アンケートで指導希望ありと回答が得られた学校とした。介入内容は、①児童・生徒・保護者を対象に子どもロコモや姿勢に関する講話、②子どもロコモチェック、③体操指導である。 【活動経過】 令和3年度の子どもロコモチェックにおいて希望する小学生197名、中学生59名を対象に、子どもロコモチェックに1つでも該当する小学生が31.0% (61名)、中学生が42.4% (25名)であった。項目別にみると小学生は体の前屈24.6% (48名)、中学生はしゃがみ込み25.4% (15名)と体の前屈23.7% (14名)において該当者が多い傾向を示す結果となった。チェックと合わせて希望校に体操指導を行い、子どもロコモ・姿勢に関する講話、体操指導では身体を動かす方法やポイントを重点的に実施した。 【まとめ】 活動を通して、PTの学校保健分野への参入のみならず、医療機関と教育機関の連携や地域の子どもたちと保護者への啓発に繋がったと考える。今年度よりPTを対象としたスクールトレーナーの養成講習会が新規開設されるなど、PTの学校保健分野への参入が期待されている。当院では今後も本活動を継続していく予定だが、対象児童の拡大や指導内容を向上させることで、PTによる地域の子どもたちへの健康支援を進めていきたい。 【倫理的配慮】本活動報告の倫理的配慮については、ヘルシンキ宣言に従い、個人のプライバシーが特定できないよう配慮している。

著者関連情報
© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top