九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: P7-3
会議情報

セッションポスター7 測定・評価
トーマステストを応用した股関節伸展角度予測の予備的研究
平林 順子江頭 智之田原 由梨立花 有希加藤 宏予東江 奈々森田 雅大石橋 雅宏梶原 大路北島 貴大八谷 瑞紀吉田 昌平
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】人工股関節全置換術 (以下THA)後の股関節伸展角度の減少が歩容に影響する文献は多くみられる。THA後の股関節伸展角度を計測してリハビリテーションを実施することは、歩容を改善するために重要な要素となる。股関節伸展角度の計測は腹臥位で行うことが一般的であるが、THA後、股関節脱臼のリスク管理として腹臥位を許容しない場合がある。当院でも、以前リスク管理の1つとして、THA後早期の腹臥位が禁止されていた。そこで、背臥位での関節可動域検査にて、股関節伸展角度を予測することが可能であるかを検討した。具体的には、トーマステストを応用し一方の股関節を屈曲した際の他方の検査側大腿部が動き始める屈曲角度と、実測した股関節伸展角度との関連を検討し予測式の作成を試みた。なお、本研究は壮年健常成人を対象とした予備的研究である。 【方法】対象は、下肢に病的機能障害がない7名 (平均年齢30.4±8.2歳)の14脚、背臥位にて上後腸骨棘と上前腸骨棘を触診し高さの差が1~2横指の成人男女とした。股関節屈曲角度は、背臥位でトーマステストを応用し一方の股関節を屈曲させ、他方の検査側大腿部が動き始めた時の股関節屈曲角度を計測した。次に、股関節伸展の実測角度は腹臥位で計測した。角度の計測はゴニオメーターを用いて実施した。統計学的解析は、単回帰分析を行った。股関節伸展角度を予測するために、従属変数を股関節伸展角度、独立変数を股関節屈曲角度とした単回帰分析を実施した。 【結果】単回帰分析の結果、有意な関連が認められた。その回帰式は、股関節伸展角度=トーマステストを応用した股関節屈曲角度×0.119+7.259 (R²=0.41、p<0.05)であった。 【考察・結語】本研究では、トーマステストを応用した方法と股関節伸展角度との関連を検討し予測式の作成を試みた。統計学的解析の結果から、腹臥位をとることができない場合でも、トーマステストを応用した背臥位での計測法で股関節伸展角度を予測できる可能性が示唆された。しかし、骨盤前傾が強い場合、すでに股関節屈曲位となるため股関節屈曲角度を過小評価してしまう可能性がある。そのため本研究では、骨盤の前傾が強い対象者は除外した。また、今回のトーマステストを応用した検査では、検査側の股関節伸展角度を予測する方法として反対側の股関節屈曲角度を計測しているため、反対側の股関節の可動域制限をともなう機能障害を加味する必要がある。今回は壮年期の男女にて、背臥位での検査で股関節伸展角度を予測できる可能性が示唆されたが、予測精度を表すR²を確認すると0.41であったため、その活用には慎重に判断する必要がある。また、今後はTHA適応年齢である高齢期の対象者で実施することにより、幅広い年齢層で使用できる方法を検証する必要がある。 【倫理的配慮】対象者には本研究の目的、方法について十分に説明を行い、同意を得た上で実施した。

著者関連情報
© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top