九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 5
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運動失調を呈した知的障害者に対する視覚効果
カラーパネルを用いた協調性訓練を通して
*中村 聡今村 潤酒匂 久光鶴留 大樹中馬 洋輔内田 大介豊永 義彦山本 義和上村 亜弓新屋敷 朝美東垂水 明子牧角 寛郎板敷 美紗緒方 敦子
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抄録
【はじめに】
 今回、知的障害を伴い下肢の運動失調を呈する患者に対し、カラーパネルを利用した協調性訓練を実施した結果、歩行の安定が図れたためここに報告する。
【症例紹介】 60歳代、男性。H20年2月デイケアのため職員が訪問した際、歩行困難・失禁が見られたため当院を受診。慢性硬膜下血腫と診断された。A病院に紹介され、血腫洗浄術を施行された。その後、リハビリテーション(以下リハ)目的にて当院へ入院し、翌日よりリハ開始となった。
【初期評価】
 協調性検査:鼻指鼻テスト(+)、企図振戦(+)、膝踵試験(+)、片脚立位:不可、継ぎ足歩行:不可、改訂長谷川式簡易知能評価スケール:5/30点
【経過】
 リハ開始時、歩行は支持基底面が狭く接地位置が不規則で、左右への動揺が強く下肢が交叉することもあり転倒の危険があった。これらの問題点に対し、正確な運動を学習させる目的としてフレンケル体操を行うことにした。
 しかし本患者は知的障害を有し、訓練内容を説明しても理解できず、模範を示し誘導しても行えなかった。
 そこで端座位となった床面の中央に黄、前方に赤、側方に青の縦・横50 cmのカラーパネルを敷き、動作を単純化して視覚的にも理解し易い環境で実施した。回数は1日につき50回から徐々に増やした。
【結果】
 これらの反復運動を行うことにより、測定障害の軽減が図れ、カラーパネルを使用しなくても訓練可能となり、運動方法についての学習も図られた。10m歩行では歩隔が平均5.7 cmから7.1 cmへ拡大した。その結果、歩行時に下肢が交叉することもなくなり、支持基底面が増大し左右への動揺が軽減した。
【考察】
 運動失調に対しては重錐負荷、フレンケル体操による反復運動が有用であると述べられている。本患者においても反復運動に重錘負荷を加えることで、固有感覚に対する刺激が高まり、下肢の運動制御が可能となり、歩隔が拡大し支持基底面の増大が図れた。
 今回、知的障害者に対してカラーパネルを用いることで、運動方法に対する理解を容易にし、リハが効果的に行えたことから、患者の知的面を考慮したリハ方法の選択と創意工夫が重要であると考える。
 今後は、立位・歩行訓練の中でもステップ位置を色で示すなど、段階的に協調性訓練を発展させ、更に測定障害の改善、歩行の安定に繋げていきたい。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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