九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 51
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腰部脊柱管狭窄症患者の低侵襲手術前後における多裂筋横断面積について
*長ヶ原 真奈美榊間 春利長谷場 純仁宮崎 雅司中尾 周平木村 宏市野島 丈史井尻 幸成小宮 節郎米 和徳池田 聡
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抄録
【はじめに】
腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Canal Stenosis: LCS)は脊椎、椎間板の変性を主体とする高齢者に多い疾患である。治療には保存療法あるいは手術療法が行われ、臨床現場でも関わりの多い疾患の一つである。手術による背筋損傷、外固定などにより、傍脊柱筋の筋萎縮が生じやすく、術後の背筋力の低下はADLと密接に関係しており、できる限り手術による侵襲を少なくして術後の傍脊柱筋の萎縮を起こさずに、ADL能力を向上させることが大切である。そこで今回、腰椎低侵襲手術を施行されたLCS患者の術前・術後の多裂筋線維断面積を計測し、筋萎縮の程度を評価した。また、筋線維横断面積が疼痛とADLに及ぼす影響を検討した。
【対象】
LCSと診断され、筋肉温存型腰椎椎弓除圧術(Muscle-preserved interlamina lumbar decompression: MILD)を施行され、学会等の発表に承諾を得た11例(男性:10例、女性1例、平均年齢70.8±9.3歳)を対象とした。術前と術後3週のCTあるいはMRI画像より、病変部位の多裂筋横断面積をScion image softwareを使用して計測した。疼痛やADL scoreはカルテ情報収集と問診により評価した。またADL scoreは日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOA score)の日常生活動作項目を使用し点数化した。統計学的検定には対応のあるt検定、スピアマンの順位相関係数を用いて行い、危険率5%未満を有意とした。
【結果】
術後は全例疼痛が減少した。多裂筋横断面積は術前と比較して有意な減少を認めなかった。術前の多裂筋横断面積は、8症例において、疼痛優位側の多裂筋横断面積が反対側と比較して有意に減少していた。また、両側の多裂筋には脂肪様組織の増加による筋萎縮が観察され、特に疼痛優位側で著明だった。多裂筋横断面積の小さい症例ではADL scoreが低い傾向にあった。
【考察】
術後早期の多裂筋の萎縮はなく、手術による影響は認めなかった。しかし、術前のLCS患者の多裂筋の萎縮は左右差を生じ、特に、疼痛優位側の萎縮が著明であった。これは、老化による廃用性筋萎縮だけでなく、疼痛抑制や反射抑制による筋萎縮が示唆された。また、多裂筋の萎縮はADLの低下と関係していることが示唆された。今回、術後早期に多裂筋断面積を計測しており、今後は症例数を増やし長期的に観察していきたい。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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