九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 136
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膝蓋腱断裂・膝蓋骨脱臼術後に対する理学療法の一考察
*鳥越 健児伯川 広明三苫 桂嗣土屋 恵睦石西 貴田中 潤
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抄録
【はじめに】
 今回、膝蓋腱断裂、膝蓋骨上方脱臼に対し膝蓋腱縫合術を施行した1例を経験した。復職に向けて理学療法を行い、良好な成績がえられたので報告する。なお本研究についての説明をし、同意を得られた。
【症例紹介】
 50代後半、男性、小学校教員。診断名は右膝蓋腱断裂、右膝蓋骨上方脱臼。現病歴はH22年11月上旬授業中跳び箱を飛び着地した際、右膝崩れ感あり受傷。当日当院受診し、上記診断。同日膝蓋腱縫合術施行。術中所見は、膝蓋腱完全断裂と内・外側支帯の断裂を認め、膝蓋骨は約5cm上方に引き込まれていた。膝蓋腱は膝蓋骨付着部に近い位置で断裂していた。手術法はKrackow縫合をかけた膝蓋腱をPull-out法で膝蓋骨に縫合し、脛骨粗面の内外側にスクリュー固定し、これをアンカーとして大腿四頭筋腱にファイバーワイヤを用いて8の字状と円状の2重の補強術を行った。縫合後は膝屈曲90°でタイトであった。既往歴に左アキレス腱断裂受傷があった。
【理学療法初期評価】
 術後6日目より理学療法開始。膝関節屈曲30°、MMT大腿四頭筋2、ニーブレース装着して1/4PWB歩行。
【治療プログラム及び経過】
 ROMに関しては術後2週まで屈曲30°、以後1週ごとに10°アップし、術後8週目で他動屈曲90°。退院時では自動屈曲80°、他動屈曲100°であった。術後3.5ヶ月で抜釘。抜釘後自動膝屈曲120°、他動膝屈曲130°。筋力は術後6週目で大腿四頭筋MMT 3、術後3.5ヶ月でMMT4。荷重は術後3週まで1/4PWB、以後1週ごとに1/4PWBずつアップし術後6週目でFWBとした。歩行は術後7週までニーブレース装着し、その後硬性装具での歩行開始。その際、長距離では片松葉杖を用い、体幹側屈や右立脚期の短縮がみられた。
【考察】
 膝蓋腱断裂は比較的まれな膝伸展機構損傷である。本症例は、過去にアキレス腱断裂を起こしており、年齢より筋や腱の伸張性が乏しいと推測された。強固な補強術も施行したことから、比較的早期から膝ROM運動を開始した。ROM制限因子となる膝蓋腱周囲の癒着や膝蓋下脂肪体の柔軟性向上を図っていった。筋力増強運動では、筋力低下を防ぐため膝蓋腱に負担がかからないように、大腿四頭筋セッティングを中心とした等尺性運動やSLR運動を中心に行った。また装具除去後は自重にて疼痛のない範囲で筋力増強運動を実施し、徐々に負荷量を上げていった。さらに歩行能力改善のため、荷重開始後は座位での足踏み運動から荷重量増加とともに立位でのその場足踏み運動を行い、患側のスムーズな膝の動きや骨盤や股関節などの代償運動を抑えるように歩行練習を行った。手術法の工夫やそれに伴った早期理学療法を行ったことで、現在膝自動屈曲135°、復職も果たし良好な経過をえられたと考えられる。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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