九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 138
会議情報
変形性膝関節症患者の大腿脛骨角とその他の因子について 第2報
*杉本 一洋力武 由美子南野 大佑岸本 稔
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
 変形性膝関節症(以下,膝OA)の変形の指標として,大腿脛骨角(femorotibial angle:以下FTA)がよく用いられる.第1報において,FTAとその他の因子の関連について調査し,FTAと股関節内旋角度に負の相関,FTAと股関節伸展角度に正の相関を認めた.しかし,症例数も少なく事前の考察と異なったため結果について疑問を持った.そこで今回,症例数を増やし第1報とは異なる結果を得たのでここに報告する.
【対象】
 対象は平成20年4月から平成23年4月に当院で膝OAと診断された症例19例24肢(男性3例,女性16例,平均年齢80.6±3歳)とした.人工骨頭置換術や人工膝関節置換術を施行していた症例は除外した.
【方法】
 方法は,FTA,BMI,ROM(股関節:屈曲,伸展,外転,外旋,内旋,膝関節:屈曲,伸展,足関節:背屈,底屈),MMT(ハムストリングス,大腿四頭筋,中殿筋)を調査した.FTAは立位正面X線像にて大腿骨長軸と脛骨長軸のなす角の外側を測定した.統計処理はFTAを目的変数,その他の因子を各説明変数として重回帰分析を行った.また,各説明変数間の影響を取り除いた時のFTAとその他の因子との相関を検討する為に偏相関係数を求め,有意水準は5%未満とした.
【結果】
 重回帰分析の結果,その他の因子はFTAを予測しえる結果となった.また,相関を認めたのはFTAと股関節内旋角度であり中等度の負の相関を認めた.
【考察】
 今回,追跡調査し症例数を増やした結果,その他の因子はFTAを予測しえる結果であったが有意な相関を認めたのは股関節内旋のみであった.古賀らは膝OAの内反変形は股関節の内旋制限と関連していると述べており,膝OA患者は膝関節だけでなく,全身アライメントの破綻を認めるとされている.膝OA患者に特有な股関節屈曲・外旋・外転位は荷重時において,脛骨を内旋させる.脛骨内旋により距骨下関節は回内し,内側縦アーチは下降する.この運動連鎖が内反変形を増強させるため,今回の結果につながったのではないかと考える.井野らは股関節内旋可動域の低下が認められ,膝OAの重症度が進行するとともに,その傾向が顕著となると述べている.これらの事から股関節内旋角度の拡大を図ることが膝関節内反の増悪を抑制する一つの要因であることが示唆される.
【おわりに】
 今後,今回の結果をもとに膝OA患者のアライメント調整を行う場合は膝関節だけでなく股関節の回旋についても着目しアプローチしていきたい.
著者関連情報
© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top