九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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当院におけるCAG患者、待機的PCI患者に対する運動指導の取り組み
*繁松 敬幸*永吉 由香*山口 佳介*稲田 百香*瀨口 真太朗*藤浦 芳久
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キーワード: CAG, 待機的PCI, 運動指導
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p. 51

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抄録

【はじめに】

当院では年間100例以上の冠動脈造影検査(以下、CAG)、経皮的冠動脈インターベンション(以下、PCI)が行われている。しかし、急性心筋梗塞、心不全患者に対する心臓リハビリテーション(以下、心リハ)介入率がほぼ100%であるのに対し、CAG患者、待期的PCI患者に対しての介入率が1%に満たない状況であった。その原因として、当院ではCAG患者、待機的PCI患者に対して運動指導や心リハがパスに組み込まれておらず、患者が運動を希望した場合にのみ心リハの指示が出ているという現状があった。これに対し患者への運動指導の普及によって心リハ介入率を上げられるではないかと考えた。

今回、CAG、待期的PCI後患者に対し、退院時リハビリテーション指導にて現状の聞き取り調査と運動指導を行い、心リハ介入率の向上への取組みを行った。

【対象】

2014年4月から1年間にCAG、待期的PCIを施行した122例(CAG84例、PCI38例)のうち、退院時リハビリテーション指導が行われた84例(CAG65例、待期的PCI19例、男性58名、女性26名、平均年齢70.1歳±7.4歳)の患者を対象に行った。

【方法】

運動指導用紙を使用して、脈拍測定の指導、カルボーネン法の計算式を用いて運動強度を個別に計算して、基本的な運動の方法や注意点を指導した。また現在の運動習慣(有酸素運動、スポーツ)などを聴取し、それを基にどういった運動が適切かを指導した。また外来通院型心リハの案内を作成し、心リハで行う運動の内容や心疾患に対する運動療法の効果を説明し心リハ参加を促した。なお、心リハに参加を希望しないとした患者にはその理由を聞き取り調査した。

【結果】

84例中、心リハ参加人数は10名であり介入率は11.9%であった。参加できない、またはしない理由としては、「自分で運動する」「自分のペースでしたいのでリハビリに来ない」「仕事で身体を動かしている」等が63名、「仕事で通院が困難」が7名、「自宅が遠方」「通院手段がない」が2名、「運動はしたくない」が1名であった。

【まとめ】

今回の試みにおいて、心リハ介入率は11.9%と低い結果となった。このなかで63名の患者が「何らかの運動習慣がある」と答えたが、「仕事で身体を動かしている」と運動に関する理解が不十分である患者がいることや、運動は自己流であり、効果的な運動種目を選択できていない、運動時間が十分でない可能性があると思われる。

日本循環器学会は心疾患における運動療法に関するガイドラインにて、運動療法による身体的効果は最高酸素摂取量の増加、冠動脈性事故発生率の減少など多岐にわたっているとしている。

当院の現状では、十分な指導ができているとは言えないが、今後、介入率を向上させることで、理学療法士が介入し適切な運動指導を行えること、運動の方法が分からない患者や、運動に不安がある患者に対して運動を始める動機づけができること、運動習慣がある患者に対しては安全で効率的な運動の指導が行えることができると考える。

今回の調査結果を得て、2016年度より待期的PCIの患者に対し、心リハがパスに組み込まれた。今後も積極的に医師と情報共有を行い、心リハの啓発とともに外来心リハ患者の介入率増加を図っていきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には、ヘルシンキ宣言に基づきあらかじめ本研究の内容、個人情報の保護を十分に説明し、同意を得た。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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