2024 年 41 巻 1 号 p. 42-58
チリ政府が2023年4月に発表した「国家リチウム戦略」は、ラテンアメリカの資源ナショナリズムの高まりを示すものとして世界的な注目を浴びた。しかし実際には、かつての外国企業排斥とは一線を画す目的と政策手段が示されている。ボリッチ政権が意図しているのは、「新しい産業政策」の考え方のもと、国家が産業の全サプライチェーンを管理する仕組みの構築である。これにより、原材料生産にとどまらず、技術革新を進め製品の付加価値を高めると同時に、環境保全と地域住民との共生を目的としている。
しかしながら、リチウムの川下産業として有望視されるリチウムイオン電池製造にはそれを搭載する最終製品部門とのすり合わせ型の開発が要求される特有の難しさがある。製品製造に優れた技術を有する日本企業などとの協力が不可欠である。