ラテンアメリカ・レポート
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特集 アルゼンチン・ミレイ政権の捉え方
  • 菊池 啓一
    原稿種別: 特集 アルゼンチン・ミレイ政権の捉え方
    2024 年 41 巻 2 号 p. 1-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
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    なぜミレイ政権の経済改革に関する審議が、国会ではなかなか進まないのであろうか。また、なぜ州知事と経済改革についての協定を結ぶ必要があるのであろうか。本稿では、ミレイ政権による経済改革の推進に大きく影響するアルゼンチンの連邦制について検討した。アルゼンチンでは国会議員の候補者選出過程で大きな役割を果たしている州知事も国政上の主要アクターであり、とくに上院議員の大統領提出法案審議での投票に影響を及ぼすことができる。他方、ミレイ率いる政党連合「自由前進」は州知事を輩出しておらず、上下両院で過半数の議席を確保できていない。そのため、経済改革に関する法案の審議に時間と譲歩が必要になっており、立法能力の向上のために2025年の中間選挙でできるだけ多くの議席を獲得することも重要であると考えられる。

    Editor's pick

  • 西藤 憲佑
    原稿種別: 特集 アルゼンチン・ミレイ政権の捉え方
    2024 年 41 巻 2 号 p. 16-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
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    新大統領ハビエル・ミレイが行った省庁再編は抜本的なもので、選挙当時から省庁数の大幅な削減を声高に唱えていたとおり、政権を発足させた後に18省を9省へと縮小させた。省庁再編は今後の政権運営を考える上での重要な出発点であり、本稿では、ミレイ政権において省庁数を削減するという省庁再編はどのような意義をもつのかを考察する。具体的には、2つの視点から今回の省庁再編の意義を考えていく。

    第一に、アルゼンチンで喫緊の課題である高インフレに対応するため、今回の省庁再編は歳出削減策の1つとして期待される。第二に、省庁再編は執政府内の権力構造を変えるものであり、自身の権力基盤を作る意義ももつ。しかし、いずれにおいても省庁再編が果たせる役割は限定的である。省庁数の削減は公務員数の削減や政策の整理をもたらすが、それによる歳出削減額は限られると考えられた。また省庁再編で旧勢力を追い出せたとしても、数が減った閣僚ポストには他党の人物が多く任命されており、ミレイは他の勢力と権力を共有する状態であるとわかった。

  • 宇佐見 耕一
    原稿種別: 特集 アルゼンチン・ミレイ政権の捉え方
    2024 年 41 巻 2 号 p. 28-40
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
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    アルゼンチンでは2023年12月にペロン党系左派フェルナンデス政権から右派の自由・前進のミレイ政権に移行した。これに伴い、労働・社会保障を含む社会政策が大きく変容しつつある。それは同時に、政府と社会政策の恩恵を受けてきた労働組合や社会組織の関係にも変容をもたらした。フェルナンデス政権以前の左派政権では、インフォーマルセクターへの社会扶助が拡大し、インフォーマルセクターの組織化も進んだ。ミレイ政権では、社会政策にも市場原理を導入し、従来の労働組合や社会組織との関係の見直しを進めている。

  • 渡部 奈々
    原稿種別: 特集 アルゼンチン・ミレイ政権の捉え方
    2024 年 41 巻 2 号 p. 41-52
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
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    アルゼンチンでは1886年以降、法律によって人工妊娠中絶が禁止されていた。中絶合法化を求める運動は民政移管後に始まったが、合法化までに37年もの年月が要された。運動の中心となったのが「合法・安全・無償の中絶の権利を求める全国キャンペーン」であり、LGBT権利運動やNi Una Menos運動の盛り上がりが中絶合法化運動にも勢いを与えた。マクリ政権下で国会審議が開始したがカトリックやペンテコステ派の反対運動で合法化には至らず、フェルナンデス政権下の2020年に人工妊娠中絶法が成立した。現在、中絶処置を行う保健・医療施設は増加しているが、施設数の地域差が著しい。2023年末に誕生したミレイ政権下で人工妊娠中絶法の廃止を求めるプロライフ派の動きは再び活発化しているが、新政権の優先課題は経済再建であり目下のところ中絶問題を取り組む余裕はない。

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