ラテンアメリカ・レポート
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論稿
  • 木下 直俊
    原稿種別: 論稿
    2026 年43 巻 p. 1-15
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/31
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    ペルーではデジタルウォレットの利用が急速に拡がっている。商業施設のみならず、街角の小規模商店や露店、バス・タクシーなどの公共交通機関、さらには公共料金や税金の支払いに至るまでデジタルウォレットでの決済が可能となり、多くの市民が財布や現金を持たず、スマートフォンひとつで日常生活を営むようになっている。

    デジタルウォレットの普及を後押しした要因としては、スマートフォンで容易に送金や受取ができる利便性に加えて、コロナ禍におけるネットショッピングの拡大や現金授受への忌避意識の高まり、さらに決済手数料や端末導入費用が不要な点が挙げられる。

    政府当局は関連法規の整備を進めるとともに、給付金や給与のデジタル支給、ウォレット間の相互接続など、利便性の向上に資する施策を展開している。また、デジタル決済の取引記録を監督し活用することで、税務および社会保障制度への包摂を促し、労働フォーマル化や財政基盤の強化へとつなげようとしている。

    一方、近年ではデジタル詐欺の増加や金融・デジタルリテラシーの不足といった新たな課題も顕在化している。今後、デジタルウォレットを通じた金融包摂および労働フォーマル化を進展させるためには、こうしたリスクへの対策と金融教育の拡充も並行して進めていくことが不可欠である。

  • 北野 浩一
    原稿種別: 論稿
    2026 年43 巻 p. 16-29
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/31
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    チリの公的年金制度は、世界的にも早期に導入された個人積立型年金制度を特徴としてきた。しかし、2000 年代以降、その構造的欠陥が顕在化し、数次にわたる改革が実施されてきた。改革は主として非拠出型年金部分の拡充を軸に進められてきたが、2025 年の改革は、その規模と対象範囲において画期的である。高齢者貧困は顕著に改善し、世論調査からも年金制度を重要問題とみなす割合が低下していることが確認される。一方で、公的年金制度における再分配機能の弱さや、個人積立型制度の存続に対する批判は依然として根強い。本稿は、所得階層および政治的立場別の世論データを用いて、2025 年年金制度改革の効果と限界を分析する。

  • 西藤 憲佑
    原稿種別: 論稿
    2026 年43 巻 p. 30-41
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/31
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    アルゼンチンはほかのラテンアメリカ諸国に比べて治安がよいとされるが、窃盗の増加や麻薬組織の活動により市民の体感不安は高まり、治安改善は重要な政治的課題の1つになってきた。2023年に就任したミレイ大統領は、その課題を解決すべく治安政策に注力してきたが、彼が極右と呼ばれるように、その政策アプローチは厳罰化に傾く。このことを受けて、本稿では、ミレイ政権が厳罰化をどのように語り、どのように取り組んできたかを明らかにする。第1に、ミレイ大統領による厳罰化のレトリックには、厳罰化の方針を掲げるだけでなく、彼の野党批判や自由市場経済を重んじる政策姿勢が反映されており、厳罰化の必要性が多面的に語られている。第2に、レトリックにとどまることなく、軍の国内治安への介入やデモ活動の制限といった厳罰化の法制度も積極的に推進されており、厳罰化に向けた新たな制度整備が浮かび上がる。昨今ラテンアメリカでみられる厳罰化の流れのなかで、このようなミレイ政権の事例は厳罰化の背景や制度について示唆に富むものである。

  • 岡田 勇, 田村 絵果
    原稿種別: 論稿
    2026 年43 巻 p. 42-55
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/31
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    ボリビアでは、2025年8月17日の第一回投票、同年10月19日の決選投票を経て、ロドリゴ・パスが新大統領に選ばれた。2006-19年および2021-25年の長期にわたり政権を握ってきた社会主義運動党(Movimiento al Socialismo: MAS)は、第一回投票で低い得票率しか得られず、決選投票にも進めなかった。本稿は、この2025年選挙のプロセスを概説し、政権交代に至った原因を読み解くことを目的とする。最大の理由と考えられるのは経済投票である。2024年頃から、中銀の外貨準備が底をついたことによる為替下落や燃料不足に端を発した経済危機が目にみえるようになった。経済危機は構造的な原因を背景とするものであり、経済財務大臣から大統領となったルイス・アルセもマクロ経済の不均衡を是正することができなかった。他方で、与党のMASはエボ・モラレス元大統領の復権を求めるグループとそれ以外とに分裂した。足元の経済課題への拙い対応とMASおよび野党における候補者の乱立が、政権交代を促したと考えられる。

  • 高橋 百合子, 馬場 香織, 手島 健介
    原稿種別: 論稿
    2026 年43 巻 p. 56-76
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/01/31
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    本研究は、ラテンアメリカの二大国であるブラジルとメキシコを対象に、市民によるグローバルサウス認識を実証的に明らかにすることを目的とする。近年、国際秩序の再編が進むなかで、「グローバルサウス」への社会的・学術的関心が高まっているが、その概念や定義は依然として曖昧であり、理解や解釈は国ごとに大きく異なる。ブラジルは自らをグローバルサウスのリーダーとして積極的に位置づける一方、米国との結びつきが強いメキシコは、より曖昧な姿勢を示している。これまで国家エリートによるグローバルサウスについての認識を対象とした研究は進展しているものの、一般市民の理解を実証的に検討した研究はほとんど存在しない。独自に実施したオンライン・サーベイの結果、グローバルサウス概念は、ブラジルでは政権支持、新興国重視、反米的国際秩序観といった文脈で、メキシコでは国際協調や多国間関係の重視という文脈で、それぞれ異なる意味をもって市民に受容されていることが明らかとなった。

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