ラテンアメリカ・レポート
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最新号
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論稿
  • 木下 直俊
    2024 年 41 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/31
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    2023年5月17日、ラッソ大統領は国会解散権を行使し、臨時総選挙の実施を突如決定した。大統領選挙には8名が立候補し、コレア元大統領が支援するゴンサレス(左派)と実業家のノボア(中道右派)の上位2名が決選投票に進み、その結果、ノボアが勝利を収めた。ノボア陣営は若年層に的を絞った選挙戦略をとり、選挙活動でインフルエンサーを動員するなどSNSを巧みに活用したことが勝因となった。また、選挙活動中に大統領候補が暗殺されるという前代未聞の事件が発生し、コレア派の関与が疑われたことでゴンサレスにとってイメージダウンとなり、有権者の投票行動に大きな影響を及ぼした。

    ノボア新政権は11月24日に発足し、任期はラッソ大統領が当初務めるはずであった2025年5月24日までの18カ月間となっている。ノボア新大統領は公約に治安と雇用の改善を挙げ、すでに2025年2月の次期大統領選挙に出馬する意欲を示している。再選を果たすには実効性の高い施策を迅速に講じなければならない。しかし、国会では来年半ばから次期総選挙に向けた動きが本格化し、与野党間の対立が深まることが予想され、少数与党であるノボア政権は厳しい政権運営を強いられることになろう。

  • 田中 秀一
    2024 年 41 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/31
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    2023年4月30日にパラグアイの大統領選挙が実施され、与党コロラド党の候補であるペーニャが当選した。コロラド党は2008年から2013年の期間をのぞき、70年以上政権を維持してきたため、現在もパラグアイは一党優位制の民主主義である。一方で、1989年の民主化以降、最大野党であるリベラル党もつねに一定の支持を集めてきたことが、この国の一党優位制の特徴でもある。2018年大統領選においても、リベラル党のアレグレは43%もの票を獲得し、46%を獲得して当選したコロラド党のアブドと僅差であった。しかし、3度目の立候補である2023年の選挙では、アレグレには票の27%しか集まらなかった。なぜ、アレグレを代表とするリベラル党は以前のように支持を集めることができなかったのか。まず、アレグレの支持が低迷したことにも原因がある。また、ポピュリストであるクーバスの登場により、反コロラド派の票が分断されたと考えられる。本論考では、現地メディアの報道や専門家の見解を参考に、2023年の大統領選挙を分析する。

  • 三浦 航太
    2024 年 41 巻 1 号 p. 27-41
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/31
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    チリでは、2019年に設立された新しい右派政党「共和党」が国政の場で台頭しつつある。本稿は、なぜ共和党が出現し、台頭したのか、その背景を考察することを目的とする。チリでは人々が経済社会的には格差を容認せず、また社会文化的にはリベラルな価値観をもつようになり、政治の側もそれに対応するように右派連合は中道左派連合へと接近する形で政策を変容させてきた。そうした変化に対する反動としてカストが設立したのが共和党である。一方で、共和党の台頭は、反動というよりも、治安というチリの近年の課題が関係している。共和党は旧来の右派と同様の主張を打ち出しつつも、治安維持という意味合いで法の支配を強調する。人々のあいだでも治安に対する問題意識は高まっており、共和党の台頭を促している。今後も治安という課題や従来から蔓延する政治不信が続くかぎり、チリの人々にとって共和党は選択肢となりうると考えられる。

  • 北野 浩一
    2024 年 41 巻 1 号 p. 42-58
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/31
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    チリ政府が2023年4月に発表した「国家リチウム戦略」は、ラテンアメリカの資源ナショナリズムの高まりを示すものとして世界的な注目を浴びた。しかし実際には、かつての外国企業排斥とは一線を画す目的と政策手段が示されている。ボリッチ政権が意図しているのは、「新しい産業政策」の考え方のもと、国家が産業の全サプライチェーンを管理する仕組みの構築である。これにより、原材料生産にとどまらず、技術革新を進め製品の付加価値を高めると同時に、環境保全と地域住民との共生を目的としている。

    しかしながら、リチウムの川下産業として有望視されるリチウムイオン電池製造にはそれを搭載する最終製品部門とのすり合わせ型の開発が要求される特有の難しさがある。製品製造に優れた技術を有する日本企業などとの協力が不可欠である。

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