日本LCA学会誌
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事例論文
すすぎ性を向上した泡状洗顔料のカーボンフットプリントと水消費の分析
大橋 憲司目野 高嗣
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2018 年 14 巻 2 号 p. 161-170

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抄録

洗顔料やシャンプーといった顔や頭髪の洗浄を目的とする製品は、「原材料の調達」「製品の製造」「流通」「使用」「廃棄」の製品ライフサイクルの中で、製品使用時の環境負荷が最も大きい。これは、内容物の使用量に比して、洗い流しに必要となる水または湯の量が著しく多くなる事に起因している。一般に、こうした洗浄製品のライフサイクルGHG排出量は、他の化粧品・パーソナルケア製品と比較して著しく大きいことに加え、洗浄製品は製品の販売数が多いことから、化粧品事業者の事業活動全体を通じたGHG排出に占める寄与が大きい。このため、洗浄製品の使用時における負荷を削減することは、パーソナルケア製品を取り扱う企業にとっては従来から大きな課題となっていた。これに着目し、株式会社資生堂は、汚れ成分の水への分散性を高める処方上の工夫により洗い流しの湯量を大きく削減した泡状洗顔料を2014年に上市している。本研究では、当該製品を評価対象とし、従来製品であるペースト状の洗顔料および通常の泡状洗顔料と比較した場合のライフサイクルGHG排出および水消費の削減効果を確認した。レギュラー品とつめ替え品との使用実態を考慮して「洗顔164回」という機能単位を設定し、40℃の湯ですすぎを行うという使用条件で算定した結果、評価対象製品はペースト状製品、通常の泡状洗顔料と比べて、1.40kg-CO2e、1.96kg-CO2eのGHG排出と、0.282m3、0.404m3の水消費とをそれぞれ削減していることを明らかとした。しかしながら、使用時の湯温が21℃以下となる場合には、ペースト状洗顔料のGHG排出量を下回ることが不可能となることが確認できた。製品の使用条件には、市場となる地域の気候だけでなく消費者の習慣や社会インフラなど様々な変動要因が関わってくる。製品開発の場面において環境負荷の削減を志向するにあたっては、こうした地域の独特な事情を加味した詳細な分析に基づき、より効果的な選択を製品設計に反映させることが重要であろう。

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