日本LCA学会誌
Online ISSN : 1881-0519
Print ISSN : 1880-2761
ISSN-L : 1880-2761
14 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
目次
巻頭言
特集「食料を支える資源と環境」
総説
  • 種田 あずさ, 柴田 英昭, 新藤 純子
    2018 年 14 巻 2 号 p. 120-133
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    人間活動によって生成した反応性窒素は、人間および環境に対する脅威をもたらしている。窒素フットプリントは、人間活動を通じた環境への反応性窒素放出(窒素ロス)を、消費者の活動を基準として定量化できる新たな指標である。本稿では、窒素フットプリント算出法として提案されている3つの方法(N-Calculator法、N-Input法、N-Multi-region法)について解説するとともに、これらの評価方法の特徴を生かした活用方法や今後の展開について述べる。N-Calculator法は、消費者一人あたりの食料・エネルギーの消費量に基づくボトムアップ型の分析法である。この方法を使うことで、一つ一つの消費行動がどのように窒素フットプリントに影響するかを定量的に評価、可視化することができる。N-Input法は、食料の生産・輸出入量と、その生産のために使われた農地への窒素投入量に基づくトップダウン分析を用いる。この方法は、複数の国から多くの食料を輸入している国について精緻に算出を行うことができる。N-Multi-region法は、各国・各部門からの反応性窒素排出量について、拡張された世界多地域間産業連関表を用いた産業連関分析を適用する。この方法を使えば、グローバルな貿易の影響を含めた多くの国の窒素フットプリントを評価することが可能であり、複雑な国際サプライチェーンや窒素ロスに関与する反応性窒素の種類を解析することもできる。本稿では、さらに、低減策の主なものとして、食品選択、家庭系ごみの削減、ラベル表示(窒素・カーボン・ウォーターフットプリント)、機関レベルのフットプリント分析(窒素・カーボン)、窒素フットプリントのオフセットの現状と可能性について述べる。また、窒素フットプリントに関する研究プロジェクトについてもいくつか紹介する。

解説
  • 松八重 一代, 大竹 久夫
    2018 年 14 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    リンは窒素・カリウムと並び植物の生長に必須の三大栄養素の一つであり、肥料原料に欠かすことのできない資源の一つである。現在、経済圏で用いられるリン資源の大半は鉱石由来のリンである。USGSの2018年の報告によると産出量については、中国、モロッコ、アメリカの3カ国で世界全体の産出量の約75%を占め、世界全体でのリン鉱石の経済埋蔵量のうち7割以上はモロッコ一国が占めている。リン鉱石の多くは肥料原料に用いられるが、半導体、表面処理剤、EV二次電池、医薬品や加工食品等の工業用途も大きな需要がある。食料供給に欠かすことのできない資源として、欧州をはじめ各国・地域でリンを戦略的資源とみなし、その持続的な利用について熱心な議論が進められている。持続可能なリン資源管理・保全に向け、今後、農業をはじめとするリン資源を活用する産業での資源利用効率の向上を目指し、未利用リン資源回収・再資源化技術開発、循環資源利用技術の産業化に向けた経済的・効率的な条件確立が期待される。

  • 林 健太郎
    2018 年 14 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/15
    ジャーナル フリー

    人類が大気中の分子窒素からアンモニアを合成する技術を確立してから一世紀が経過した。人工的固定窒素を起源とする化学合成窒素肥料は食料の大増産を可能とし、同じく各種窒素化合物は原料や素材として化学産業を発展させ、世界の人口増加と経済成長に大きく貢献してきた。地球システムの人間圏に発生したこの新たな窒素フローは、いまや大気・陸水・土壌・海洋といった他のサブシステムの窒素フローを撹乱するほどに巨大となり、様々な環境問題を直接・間接にもたらしている。よって、人類の持続的な窒素利用には,便益の最大化と同時に付随する生態系や健康への有害影響を最小化する窒素管理の枠組みが必要となっている。本稿は、世界規模の窒素管理システムの構築を狙う国際プロジェクトTowards INMS(International Nitrogen Management System)に関する研究動向を東アジアと日本の視点から紹介し、今後の産業・LCA分野の研究展開への期待を述べることを目的とする。

一般投稿
研究論文
  • 山末 英嗣, 光斎 翔貴, ベンジャミン マクレラン, 松八重 一代
    2018 年 14 巻 2 号 p. 146-157
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/25
    ジャーナル フリー
    今後想定される爆発的な人口増加に備え、戦略的に食料生産を行うことが重要である。効率的な食料生産には、加温、肥料、農薬等が不可欠であり、それらの背後にはエネルギー資源、鉱物資源に関わる採掘活動が隠れている。本稿では食料生産に関わる採掘活動量について、関与物質総量を用いて評価するための枠組みを構築し、その後、日本における食材生産をケーススタディとして評価することを目的として研究を進めた。対象食材は一部例外を除き国産の野菜類41種、果実的野菜・果樹類8種、魚介類16種、畜産5種とした。これらの推算のため、国内外の飼料5種についても計測を行った。機能単位は出荷状態の食材1kgとした。推算で得られた食材のTMR(total material requirement)係数(kg-TMR/kg)は、食材種毎に似た特徴を有していた。温室を使う作物はエネルギー投入の影響が支配的であり、そうでない作物のほとんどは肥料の影響が支配的であった。飼料のTMR係数は食材と比較して低く、飼料間で大きな差異は見られなかった。漁業に関して、定置網漁法のTMR係数は他の漁法と比べ小さく、ほとんどの場合において材料(漁具)やエネルギーの投入は無視しうるほど小さかった。一方、他の機船等を用いる漁法ではエネルギーの影響が支配的であった。畜産では、肉牛の生産に関わるTMR係数が肉豚やブロイラーに比べ5〜6倍高いTMR係数を示した。
諸報
一般投稿
事例論文
  • 大橋 憲司, 目野 高嗣
    2018 年 14 巻 2 号 p. 161-170
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/25
    ジャーナル フリー
    洗顔料やシャンプーといった顔や頭髪の洗浄を目的とする製品は、「原材料の調達」「製品の製造」「流通」「使用」「廃棄」の製品ライフサイクルの中で、製品使用時の環境負荷が最も大きい。これは、内容物の使用量に比して、洗い流しに必要となる水または湯の量が著しく多くなる事に起因している。一般に、こうした洗浄製品のライフサイクルGHG排出量は、他の化粧品・パーソナルケア製品と比較して著しく大きいことに加え、洗浄製品は製品の販売数が多いことから、化粧品事業者の事業活動全体を通じたGHG排出に占める寄与が大きい。このため、洗浄製品の使用時における負荷を削減することは、パーソナルケア製品を取り扱う企業にとっては従来から大きな課題となっていた。これに着目し、株式会社資生堂は、汚れ成分の水への分散性を高める処方上の工夫により洗い流しの湯量を大きく削減した泡状洗顔料を2014年に上市している。本研究では、当該製品を評価対象とし、従来製品であるペースト状の洗顔料および通常の泡状洗顔料と比較した場合のライフサイクルGHG排出および水消費の削減効果を確認した。レギュラー品とつめ替え品との使用実態を考慮して「洗顔164回」という機能単位を設定し、40℃の湯ですすぎを行うという使用条件で算定した結果、評価対象製品はペースト状製品、通常の泡状洗顔料と比べて、1.40kg-CO2e、1.96kg-CO2eのGHG排出と、0.282m3、0.404m3の水消費とをそれぞれ削減していることを明らかとした。しかしながら、使用時の湯温が21℃以下となる場合には、ペースト状洗顔料のGHG排出量を下回ることが不可能となることが確認できた。製品の使用条件には、市場となる地域の気候だけでなく消費者の習慣や社会インフラなど様々な変動要因が関わってくる。製品開発の場面において環境負荷の削減を志向するにあたっては、こうした地域の独特な事情を加味した詳細な分析に基づき、より効果的な選択を製品設計に反映させることが重要であろう。
諸報
コラム
研究室紹介
賛助会員紹介
賛助会員名簿
会務報告及び編集委員会からの報告事項(会務報告・編集後記・奥付)
feedback
Top