日本LCA学会誌
Online ISSN : 1881-0519
Print ISSN : 1880-2761
ISSN-L : 1880-2761
事例論文
砂糖・エタノール逆転型複合生産システムの導入による温室効果ガス排出量削減効果
小原 聡菊池 康紀大内田 弘太朗杉本 明服部 太一朗安原 貴臣福島 康裕
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 15 巻 1 号 p. 86-100

詳細
抄録

本論文では、エタノール生産プロセスが現状導入されていない製糖システムに 2 つの砂糖・エタノール・電力複合生産システム:(1)糖蜜発酵を追加する従来型複合生産システム、(2)サトウキビ品種とプロセスを変更する逆転型複合生産システムを導入した場合の各製品の温室効果ガス(GHG)の累積排出原単位(Cradle-to-gate)、ライフサイクル全体からのGHG排出量(Cradle-to-grave)を定量化し、比較評価することを目的とした。その結果、従来型複合生産システムを導入するケースでは、糖蜜からエタノールへの製品変更と売電量減少により、ライフサイクルにおける原料生産から製品生産までのGHG排出量が現状比 1.3% 増加する一方でライフサイクル全体では0.72 t-CO2-eq./(ha・year)のGHG排出削減ポテンシャルがあることが分かった。逆転型複合生産システムを導入するケースでは、年次変動はあるものの、砂糖、エタノール、電力の全てを同時に増産でき、ライフサイクルにおける原料生産から製品生産までのGHG排出量が現状比 16.7%増加する一方で、ライフサイクル全体では1.49 t-CO2-eq./(ha・year)のGHG排出削減ポテンシャルがあることが分かった。また感度解析により、エタノールや電力の累積製造GHG排出原単位は各製品への排出量の配分比率の変化に対して感度が高く、逆転型複合生産システムの排出削減ポテンシャルは原料データの年次毎のばらつきに対して感度が高いことが示された。結果の妥当性を検証した結果、既往研究で報告されたサトウキビ、砂糖生産におけるGHG排出原単位と本論文の結果の数値の差異を前提条件の差異により半定量的に説明できるため、既往研究との整合性を確認できた。モデル地域における逆転型複合生産システムの生産面・GHG排出量の面での優位性が定量的に示された。

著者関連情報
© 2019 日本LCA学会
前の記事 次の記事
feedback
Top