日本LCA学会誌
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研究論文
民間航空機向け需要を対象としたレニウムの動的物質フロー分析
吉村 彰大末益 航洋松野 泰也
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2020 年 16 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

近年、航空機エンジンの性能や燃費向上にニッケル基超合金が用いられ、高温クリープ特性向上にレニウムが添加される。しかし、天然資源に乏しいことから供給は不安定である。本研究では、航空機用途のレニウムについて、物質フロー分析を通じて 1980 年から 2017 年にかけての需要、ストック、およびリサイクルポテンシャルを推計した。その結果、1980 年以降航空機の新造向けのレニウム需要、およびストックは増加を続けており、最大値はそれぞれ2016 年の 49.9 t、および 2017 年の 708 t と推計された。一方メンテナンス向けの需要は整備周期に依存し、4 年周期、 6 年周期、8 年周期とした場合、それぞれの最大値は 2017 年の 29.8 t、18.3 t、および 12.2 t となった。また、退役機に由来するリサイクルポテンシャルの最大値は 2015 年の 15.3 t と推計された。2013 年以降、航空機向けのレニウム需要が一次地金の生産量とほぼ同量となったことから、需給バランスは退役機からのスクラップのリサイクルで維持されていると示唆された。ただし、将来的に退役機数、および退役に起因するスクラップ発生量の減少が予想されたことから、安定的な供給にはスクラップからのリサイクル率の向上が重要であることが示唆された。

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