近年,オオミノガヤドリバエの出現とそれに続く寄生率の増加により,オオミノガEumeta japonica(Heylaerts)が激減しているという(金沢・山本・中谷,1999).岐阜県における現状を調べるために,オオミノガとその他の大型種,すなわちチャミノガE.minuscula Butler,ネグロミノガAcanthopsyche nigraplaga(Wileman),ニトベミノガMahasena aurea(Butler),クロツヤミノガBambalina sp.について調べた.調査は2000年および2001年の冬季より早春の落葉樹の葉が失われている期間であり,採集した1,256のミノはすべて内部を開き,7つの項目に分類した.すなわち,空の状態,死亡個体や崩壊殻片などが存在し,寄生以外の他の要因によって死んだもの,寄生バエの囲蛹殻の存在したもの,寄生バチの蛹殻の存在したもの,雌の羽化殻,雄の羽化殻,生存幼虫がいたものである.その結果,チャミノガ,ネグロミノガ,クロツヤミノガはたくさんのミノが見つかり,生存個体も多かったのに対し,オオミノガ,ニトベミノガのミノは少なく,それらのミノの中にもほとんど生存個体を見出すことができなかった.また,オオミノガ1個体あたりの寄生バエの囲蛹の存在数は1から42の範囲で見られた.チャミノガやクロツヤミノガは1もしくは2のものがほとんどであった.オオミノガの幼虫の大きさからたくさんの寄生生物の幼虫を養えると考えられるが,大部分のものは少ない囲蛹数であったことから,多くの寄生バエ囲蛹の存在は寄生バエ雌成虫の複数回産卵の結果ではないかと考えられた.