2017 年 68 巻 2 号 p. 61-64
ある種のアゲハチョウは雄成虫が特徴的な香気性の匂いをもつことで知られる.しかし,匂いの化学組成はアゲハチョウ亜科に属すわずか数種で調べられたに過ぎず,雄特有の匂いがアゲハチョウ科に広くみられる共通形質であるのかどうかはよくわかっていない.我々は,研究室で飼育したギフチョウ(ウスバアゲハ亜科)の成虫を溶媒抽出し,その高揮発性成分の化学組成をGC-MSで調べた.ヒトの嗅覚では本種成虫から強い匂いを感じ取ることはできないが,雌雄成虫の溶媒抽出物から24の高揮発性化合物を同定した.その17成分はアゲハチョウ科成虫の匂い成分としては初めての発見であった.最も含有量の多い成分は limonene で,雌雄1個体につき約1 μg含まれていた.一方,各成分の雌雄の含有量に有意差はなく,同定した24成分について化学組成は雌雄でほぼ類似であった.これらの結果より,ギフチョウ成虫は雌雄共通の匂いを有し,雄に特異的な匂い成分をもっていないと考えられる.