蝶と蛾
Online ISSN : 1880-8077
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ヤマトスジグロシロチョウの季節型による翅の色彩と香気 成分の変化
棚橋 一
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2018 年 69 巻 1 号 p. 33-43

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抄録

ヤマトスジグロシロチョウ(Pieris napi japonica)の季節型(春型と夏型)による翅の色彩と翅から発散される香気成分の変化について走査型電子顕微鏡(SEM),紫外可視分光光度計およびガスクロマトグラフを用いて検討した.春型の前翅長は,雌雄共に夏型に比べて短く,翅脈は夏型より太く黒色で明瞭であった.SEM により,春型の白色および黄白色の鱗粉には,雌雄ともに顆粒(ビーズ)が見られた.一方,夏型では,雄の白色および黄白色の鱗粉にのみ顆粒が見られ,雌の鱗粉には見られなかった.また,春型と夏型ともに,黒色の鱗粉には顆粒が見られなかった.春型では,雌の紫外領域における反射率が雄に比べ大きかったが,反射スペクトルの形状は雌雄で類似していた.一方,夏型では,雌の紫外領域における反射率が雄に比較して大きく,可視領域では小さくなり,スペクトルの形状に大きな違いが見られた.このような違いは鱗粉内の顆粒の有無に起因していると考えられる.発香鱗は春型と夏型に共通して雄翅の背面側にのみ見られた.香気成分は,春型と夏型ともシトラールとリナロールであった.しかし,香気成分の全量は,春型に比べ夏型の方が4倍以上多かった.以上のように,夏型は春型に比べて翅の反射率の違いが雌雄で顕著であり,発散する香気成分量も多いことが分かった.

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© 2018 日本鱗翅学会
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