哺乳類科学
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短報
丹沢山地札掛地区におけるニホンジカ(Cervus nippon)生息密度
永田 幸志岩岡 理樹
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2011 年 51 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

本研究は,丹沢山地におけるニホンジカの生息密度の経年的変化と季節的変化について明らかにすることを目的として行った.調査地は神奈川県愛甲郡清川村札掛地区で,1998年12月~2007年4月まで,毎年冬期(12月)と春期(3月下旬から4月上旬)に区画法により生息密度調査を行った.調査地内では,1998年から2001年には,12月から翌年の4月または5月まで継続的な人工給餌が行われた.冬期,春期共に,生息密度は比較的高密度で安定しており,経年的な変化に増減の傾向は見られなかった.また,給餌未実施期間は,毎年,冬期に比べて翌年の春期の生息密度が低くなる傾向が見られた.札掛地区を含む丹沢山地のシイ・カシ帯では,食物条件の悪化が指摘されているが,主に落葉採食等の食性の変化や,豪雪等がなかったことを理由として,比較的高い生息密度が維持されたと考えられた.また,生息密度の季節的変化には,狩猟の影響による可猟域から鳥獣保護区へのシカの移動と,冬期から春期にかけての死亡個体の増加が影響したと考えられた.

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© 2011 日本哺乳類学会
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