哺乳類科学
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原著論文
ゴマフアザラシ(Phoca largha)の胎仔成長における形質の発現と着床日の推定
佐々木 理紗櫻井 裕太小林 万里
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2014 年 54 巻 1 号 p. 1-9

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抄録
ゴマフアザラシ(Phoca largha)の胎仔19頭を使用し,胎仔成長における形質の発現を調べた.本種には着床遅延があることが知られており,着床日に関する報告がほとんど無いことから,着床日を推定し,着床遅延の意義について考察した.本研究では便宜的に1月1日を1とした日数を死亡日とした.250日以降の死亡個体で爪が,262日以降の個体でヒゲが確認でき,358日以降の個体で毛を確認できた.爪やヒゲが早期に形成され,毛が遅れて形成される傾向は,他のアザラシで報告されている結果と同様であった.また,毛が確認できた358日以降の個体からは歯の萠出及び目が開いていることも確認された.出生時期までに,毛や歯の萌出が完了し,目が開いていることは早成性の特徴と一致した.さらに,体長と各部位の相対成長を調べたところ,25部位中11部位が優成長となり,前肢及び後肢の相対成長係数が高い値を示したのは,本種の出生2–3週間後の早期に遊泳を開始するためと考えられた.推定平均着床日は218日(8月7日)で,その95%信頼区間は7月23日から8月21日であった.
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© 2014 日本哺乳類学会
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