2017 年 57 巻 2 号 p. 227-234
現在沖縄島北部に局所的に分布する絶滅危惧種オキナワトゲネズミTokudaia muenninki(齧歯目ネズミ科)を対象として,過去の生息記録等を収集し,分布の変遷を検討した.本種は,有史以前には沖縄島の全域と伊江島に分布した可能性がある.1939年の発見時には,少なくとも現在の名護市北部から国頭村にいたる沖縄島北部に広く分布した.外来の食肉類の糞中にオキナワトゲネズミの体組織(刺毛等)が見つかる割合は,1970年代後半には75–80%であったが,1990年代後半までに大きく低下し,2016年1月の本調査では0%であった.トゲネズミの生息地面積は,有史以前から現在までに99.6%,種の発見時点から現在までに98.4%縮小したと見積もられた.