マーケティングジャーナル
Online ISSN : 2188-1669
Print ISSN : 0389-7265
論文
RFMデータを用いた顧客生涯価値の算出
─ 既存顧客の維持介入と新規顧客の獲得 ─
阿部 誠
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2014 年 34 巻 1 号 p. 73-90

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抄録

CRMの現場でRFM分析が広く使われていることは,これら3指標が顧客の購買行動を簡潔に集約していることを裏付けている。本論文では,まず,既存のRFM分析の問題点を指摘する。次に,消費者行動に関する基本的な仮説に基づいて,RFM指標から顧客ごとに購買頻度,離脱率,購買金額を導き出し,その顧客の未来の行動を予測することによって顧客生涯価値(CLV)を算出する。そして構築されたモデルから,既存顧客の維持介入と新規顧客の獲得に関する知見を得る。
実証分析では,百貨店の顧客購買データを分析して,購買行動を特徴付ける9つの統計量(生涯価値に加えて,購買頻度,離脱率,購買金額,最終購買以降の期待生存時間,1年後の維持率,観測終了時点での生存確率,検証期間中の期待購買回数と総購買金額)を顧客別に算出する。これらの統計量は,優良顧客の識別や個別対応など個人レベルのCRM戦略に特に有用である。また,既存顧客に対して,誰に,どのくらいの介入レベルを,いつアプローチすれば,マーケティングROIの観点から最も効果的か,という維持介入例も示す。RFM指標の存在しない見込客に関しては,購買頻度,離脱率,購買金額の3行動要因を既存顧客のデモグラフィク変数と関連付けることで,デモグラフィック特性のみに基づいたCLVの高い新規顧客獲得戦略など経営上の示唆を得る。

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© 2014 The Author(s).
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