近年アベノミクスによる女性活躍推進を背景に,働く女性に向けた新しい商品・サービスが生まれ,女性の購買行動は大きく変化しつつある。一方で,「女性の視点」と一口に言っても,「働き手」としてなのか,「消費者」としてなのか,あるいは「次世代育成の担手」としての女性なのか…など,その意味は多義的である。また女性のライフコースは多様であり,表出する事象も複雑である。
本稿ではリサーチプロジェクトでの研究を進めるにあたり,これまで社会やビジネス,学術研究において用いられている「女性の視点」の文脈に関して基礎的な整理を行った。その上で,マーケティング事象を捉えるにあたって,第一線で働くキャリア女性に向けた新しいビジネスを創造し成長しているkay me㈱,㈱タスカジの事例を取り上げた。両例とも,女性起業家による新規ビジネスであるが,その共通する構造は,女性の社会進出に伴う顧客の悩みを,革新的で合理的なサービスの仕組みで解決すると同時に,自らの事業の哲学やヴィジョンその仕組みを開示し,顧客と共にビジネスを創る姿勢によって,顧客からの共感を生み出しながら,関係性を強固に構築する取り組みがみられた。