サービスをプロセスとして捉えるS-Dロジックが提示されてから,かなりの時間が過ぎた。しかし,S-Dロジックが求めた新たなマーケティングは未だその姿が明らかとなっていない。一方,もともとサービスをプロセスとして理解してきたのが北欧学派であり,Sロジックである。そこで,両者からの示唆を得ながら新たなマーケティングについて考察することを本稿の目的とした。その結果,消費プロセスで文脈価値を高めるマーケティングを新たに価値共創マーケティングと呼ぶことにし,伝統的マーケティング,類似概念との対比を試みた。次に,それがどのような意義を持ち,その実践がどのような成果を生むかについて議論し,若干の典型的な事例をみることで,4Cアプローチ,文脈マネジメントといった独自の考え方を示すと共に,価値共創マーケティングを推進する企業システムについても言及した。
マーケティングに必要な解決策のアイデアはKJ法のみでは生まれない。アブダクションという飛躍的な推論プロセス(ひらめき)が不可欠である。そこで,本稿はTFAと呼ぶアブダクションを導く発想ツールを提示し,その有効性を議論する。
近年アベノミクスによる女性活躍推進を背景に,働く女性に向けた新しい商品・サービスが生まれ,女性の購買行動は大きく変化しつつある。一方で,「女性の視点」と一口に言っても,「働き手」としてなのか,「消費者」としてなのか,あるいは「次世代育成の担手」としての女性なのか…など,その意味は多義的である。また女性のライフコースは多様であり,表出する事象も複雑である。
本稿ではリサーチプロジェクトでの研究を進めるにあたり,これまで社会やビジネス,学術研究において用いられている「女性の視点」の文脈に関して基礎的な整理を行った。その上で,マーケティング事象を捉えるにあたって,第一線で働くキャリア女性に向けた新しいビジネスを創造し成長しているkay me㈱,㈱タスカジの事例を取り上げた。両例とも,女性起業家による新規ビジネスであるが,その共通する構造は,女性の社会進出に伴う顧客の悩みを,革新的で合理的なサービスの仕組みで解決すると同時に,自らの事業の哲学やヴィジョンその仕組みを開示し,顧客と共にビジネスを創る姿勢によって,顧客からの共感を生み出しながら,関係性を強固に構築する取り組みがみられた。
本稿はブルー・オーシャン戦略という共通言語を手掛かりに,マーケティング論と経営戦略論という異なる背景知識を有し,アカデミズムとプラクティスのキャリアも異なる研究者が対話し,2つの研究領域を架橋する試みである。
実務の現場では常態ともいえる事前計画と事後創発の共存する局面について,マーケティング論・経営戦略論の分野では,それぞれ研究蓄積が進んでいる。先行研究のレビューから得られる知見に基づき,本稿では,組織内の経営層と現場,組織と市場,組織と第2の市場という3つの局面で,事前計画と事後創発のギャップが生じることを示す。
さらに2つの事例分析に基づき,ブルー・オーシャン戦略が事前計画と事後創発の共存をマネジメントする有力なツールとなり得る可能性を指摘する。ただし,現時点でのブルー・オーシャン戦略には,マーケティングの本質ともいえる上市後に「価値と文脈を同時に創出する」点が明示的に反映されていない。
そこで本稿では,マーケティングの視点をより強化し,市場における事後創発の要素を加味した「ダイナミック・ブルー・オーシャン戦略」を新たに提示し,新たな理論展開の可能性を示唆する。
本論文では,ブランドマネジメントに関する慣性が強化・緩和される条件を明らかにする。とりわけ,当該企業が技術革新や新たな業態の誕生といった市場環境の変化に直面しているのにもかかわらず,ブランドを革新することが難しくなってしまうという慣性に着目する。西川産業株式会社のコンディショニングマットレス「AiR(エアー)」の事例を通じて明らかにされるのは,そのような慣性が,ブランドに対する知識という市場に蓄積された資源とそれを構築する過程で蓄積された組織能力の存在によって強化されており,ブランドのあるべき姿への共通の理解が組織内の求心力を高める一方で,それがブランドの革新を阻んでいる点である。こうした組織内に生じた慣性は,変化する市場環境を機会として認識した革新の推進者による個人的かつ直接的説得や,新たに設立された組織からの間接的影響などを通じて,資源と環境に対する多くのメンバーの主観的認識が変化することで緩和されていく点が示される。
消費者の広告回避に焦点を合わせた一連の既存研究は,「なぜ,消費者は広告を回避したり,回避しなかったりするのか」という問いに解答を与えようと試みてきた。これらの既存研究によって形成された研究潮流においては,比較的近年の注目すべき傾向として,複数の国や地域を対象とした国際比較が展開されるようになっている。本稿は,消費者の広告回避に関する国際比較研究における今後の方向性として,(1)複数の国や地域の間の共通性と相違性を説明可能な理論から仮説を導出したうえで,(2)翻訳の同等性以外の同等性も慎重に吟味することが必要であるということを示唆する。